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続々・承認 5

聖戦を共に闘いエリュシオンの崩壊で一度は離ればなれとなり、すれ違いを続けていた沙織と星矢たち。
だが、再会を喜ぶ時間はなかった。
そして状況はさらに悪くなっていた。

「女神アテナ……」
シオンは漸く言葉を交わす事が可能となった女神との再会に、言葉を詰まらせる。
それは沙織も同じ事なのだが、彼女の方は不思議そうにシオンの顔をじっと見た。
「如何されましたか?」
女神エリスにも同じような反応をされているので、シオンとしては気にせずにはいられない。
だが、沙織もまた争いの女神と同じように何でもないと答える。
「ところで女神エリスは?」
嫌な感じはしたのだが、確認の為に彼は尋ねた。
そして予感は的中したのである。

「エリスさんが……」
沙織から女神エリスが呪術媒体となって消えてしまった事を知らされた春麗は、その場にしゃがみ込んでしまう。
「春麗さん」
沙織の呼び掛けに、春麗は涙目で彼女の事を見上げる。
「エリスは海底神殿で貴女に会った時から、ずっと待っていたそうです。
自分の事は心配するなと伝言がありました」
沙織はこの時、春麗を羨ましいと思った。
エリスは自分を可愛がってくれたけど、自分の記憶が戻る事を待ち望んでいたわけではない様に思えたからだ。
恩師でさえそうなのだから、親友が自分との再会を喜んでくれるのか不安になる。
そもそも美穂は星矢の事で自分に良い印象を持ってはいない。
(それでも、私はパラスに逢いたい。逢って話がしたい……)
ただ、その為には美穂にパラスの記憶を思い出してもらわないとならない。
しかし、そんな事をすれば星矢は美穂を失う事になるかもしれない。

「エリスさんが……」
いつも余裕の表情だった女神を思い出して、春麗は自分が抱いている箱を見た。
あの女神が心配するなと言った。
それだけで何故か、彼女は大丈夫だと春麗は思えた。
多分、今自分が一番聞きたい言葉だったからなのかもしれない。