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続々・承認 3

神代の頃からの友というのは、非常に有り難いと沙織は思う。
双児宮にやって来てくれた冥妃ペルセポネは、幾つかの貴重な情報を教えてくれたのだ。

大地に属する女神達は今のところ全員無事。
だが、聖域の大地の汚染とタルタロスの異変により彼女たちの力はかなり削られており、既に精霊の中でも意識不明の者が出始めているという。
そして最大の問題である最強のギガースといわれるポルピュリオーンとアルキュオネウスは着々と地上に向かって移動していて、夜明けには地底からデスクィーン島に到着するらしい。


「デスクィーン島??」
沙織はいきなり出てきた場所の名に驚く。
すると冥妃は頷いて答えた。
今、あの島は何故か部分的に冥界と空間の共有がされており、彼らは冥界を迂回する可能性があると……。
沙織は事態の異常さに目を見張った。
何もかもが一点に集中しているのである。
そして冥界の女神は沙織の前に手を差し出す。
沙織はその手に触れた。
冥妃はこの時、世間話をするかの様に女神達の間で囁かれる噂話を口にしたのである。
そのうちの一つに沙織は背筋が寒くなった。
すると彼女の表情にペルセポネはにっこりと笑う。
彼女の悪戯っぽい笑顔は昔のままだと沙織は思った。
『── 御武運を……』
柔らかな少女の声。
その瞬間、双児宮の壁が細かく震え冥妃の姿は一瞬強く輝くと、そのまま霧の様に溶け込む様に消えていった。


そして、双児宮から光は消え、元の荒れた部屋に戻ったのである。

二人の黄金聖闘士は何処かで起こった爆発の直後、一瞬だけ見る事の出来た冥妃に驚いてしまう。
何故ならその姿は小さな少女で、しかも冥王の姉パンドラによく似ていたからだ。
違うといえば目の色くらい。
この時彼らは、いつの日か冥王の姉が幼い冥妃を連れてここに来るのではと考えてしまった。


その頃、ハインシュタイン城ではパンドラが父親の書斎で調べ物をしていた。
先程まで冥界からミーノスがやって来ていたのだ。
この時の事を思い出すと、ラダマンティスは胃が痛みそうになる。

今回はミューがサポートしてくれているので、ミーノスの事が一般人にバレる心配はない。
どちらかというとフル装備でハインシュタン城へやって来てパンドラと面会した彼の行動に神経が切れそうだった。
(少しは分別を付けろ!)
一応、今のラダマンティスは私服で行動している。
何故なら冥衣をまとって人目を気にする状態では、逆に後手に廻りかねない。
それにワイバーンの冥衣は臨戦状態なので、自分が装着の意思を示せば即座に目の前に現れてくれる。
なのにどうして仲間はその努力を無に返そうとするのか。
しかし、今回は相手の方が計算能力が高かった。
「今はミューが居るから外部の目は気にする必要はありません。
それにこれからこういう事は何度もある筈ですから、パンドラ様にも協力して貰わないとなりません。
全てはシュミレーションという事で納得して下さい」
すると一緒に居たパンドラは、なるほどと呟く。
確かに地上に居るのであれば、自分がフォローしないと弟の闘士たちは任務がやりにくいかもしれない。
彼女としては、そこまで足手まといになりたくなかった。
「ラダマンティス。ギガースとの闘いは長期戦になるかもしれないのだ。
私の護衛役ならば、それくらいは覚悟をしておけ」
こうなると正論はミーノス側にあった。