神代の頃からの友というのは、非常に有り難いと沙織は思う。
双児宮にやって来てくれた冥妃ペルセポネは、幾つかの貴重な情報を教えてくれたのだ。
大地に属する女神達は今のところ全員無事。
だが、聖域の大地の汚染とタルタロスの異変により彼女たちの力はかなり削られており、既に精霊の中でも意識不明の者が出始めているという。 そして最大の問題である最強のギガースといわれるポルピュリオーンとアルキュオネウスは着々と地上に向かって移動していて、夜明けには地底からデスクィーン島に到着するらしい。
「デスクィーン島??」 沙織はいきなり出てきた場所の名に驚く。 すると冥妃は頷いて答えた。 今、あの島は何故か部分的に冥界と空間の共有がされており、彼らは冥界を迂回する可能性があると……。
沙織は事態の異常さに目を見張った。 何もかもが一点に集中しているのである。 そして冥界の女神は沙織の前に手を差し出す。 沙織はその手に触れた。 冥妃はこの時、世間話をするかの様に女神達の間で囁かれる噂話を口にしたのである。 そのうちの一つに沙織は背筋が寒くなった。 すると彼女の表情にペルセポネはにっこりと笑う。 彼女の悪戯っぽい笑顔は昔のままだと沙織は思った。
『── 御武運を……』 柔らかな少女の声。 その瞬間、双児宮の壁が細かく震え冥妃の姿は一瞬強く輝くと、そのまま霧の様に溶け込む様に消えていった。
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