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続・承認 6

「ダイダロス!!!」
矢座のトレミーは目的の人物をようやっと捜し当てると、いきなりその腕を掴んだ。
あまりの剣幕にダイダロスは何事かと目を丸くする。
「どうしたんだ。敵襲か?」
確認の為の言葉ではあるが、結構間抜けな台詞だとオルフェは思ってしまう。
まだ聖域の何処にも戦闘が発生した気配はないのだから。
「ヘラクレスの弓と矢について、何か覚えていないか!」
トレミーの言葉に、ダイダロスの表情が微妙に変化した。
「知っているのか!」
「……それはシオン様から言われたのか?」
「教皇様に言われたからではない。
ただ、あれが無ければ聖闘士を何人敵地に送り込んでも意味がない!」
「……」
「武器の使用に関しての責任は取る。
頼む。教えてくれ!」
この場合、話の展開によってはダイダロスの方が危険な立場に立たされる事は、第三者のオルフェにも容易に理解出来た。
何故なら親友は色々な事に通じ過ぎている。
呪術といい武器といい、聖闘士が知るべき事ではないというのに……。
ダイダロスはしばらくトレミーを見た後、静かに言った。
「トレミー。これから私の頼みを聞いて欲しい。
約束してくれれば全ての責任は、私が負う」
「ダイダロス!」
オルフェが驚きの声を上げたが、彼は言葉を続けた。
「実は私もヘラクレスの弓と矢の在り処は知らない。
だが、大事に保管してくれていた人の名は知っているし、案内も出来る。
頼みというのは、その人の名が表にでない様にして欲しいのだ」
ダイダロスの言う当時の事情は、オルフェにとってもトレミーにとっても衝撃的だった。
確かにヘラクレスの弓と矢は武器ではあるが、聖域の秘宝でもある。
逆賊がそれを支配下に置こうとするのは当然の事。
実は十年程前、偽の教皇が秘密裏に破壊しようとしたのを心ある人物が盗み出し、今まで隠し持ってくれたのだ。
「仕方なかったとはいえ、真っ当な方法ではない。
場合によっては、その人には厳罰が処される」
しかし、本来継承されるべきヘラクレス座か矢座の聖闘士が見付けたというのなら、話はそれで終わるのだという。
「判った……。絶対に言わない」
その時、トレミーはヘラクレス座の白銀聖闘士アルゲティには尋ねていなかった事に気が付いた。
今までそういう話を向こうから聞いた事が無かったので、最初からアルゲティも知らないと思い込んでいたのである。
(もしこれでアルゲティが知っていたら、俺一人がバカだな)
そう思った時、魔矢から 『まったくだ』 と言う声が聞こえた。
腹立たしいが、彼は最初の頃より怒る気がしなかった。