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承認 6

今までそんな生活が当たり前になっていた。
だから幼なじみと再会した時は嬉しかったけど、昔の様に手を握ってもらう事が出来なくなっていた。
今度、手を離されたら自分が壊れてしまいそうだったから。
なのに幼なじみは昔と変わらず、自分に話しかけ手を繋ぎ、他愛の無い話を嬉しそうに聞く。
でも、城戸のお嬢さんの為に、彼は傷付き続ける。

一度、幼なじみの前でお嬢さんの事が大嫌いだと言った事がある。
本音の筈なのに心が重い。自分の中の悪意を彼の前に曝け出したのである。
困った様に自分の事を見る彼を見た時、美穂は自分が失恋したのだと理解した。
もう、こんな醜い自分を昔の様に幼なじみは見ない。見てはくれない。
それでもやはり彼の傍に居たいという気持ちを捨てる事が出来なかった。

「馬鹿みたい……」
今でも此処で泣いていれば、彼が迎えに来てくれる様な気がしてならない。
でも、そんな事は有り得ないという事も、心の何処かで納得していた。

しばらく真っ暗な教会内で気持ちを静めた後、美穂は再び子供達の様子を見て回った。
異常がない事を確認した後、台所の様子を見る。
(そういえば、あの人初めて見る人だった……)
自分に手の込んだショールをプレゼントするというので慌ててそれは断ったのだが、姪に似ているとかで無理矢理押しつけられた。
近所の人達も違和感無く彼女と話をしていたが、誰なのかと尋ねると
「何処かの企業の社長夫人?」
と、何か頼り無さそうな返事だった。
「明日も来てくれるかな?」
美穂はそう呟いた後、台所の電気を消す。

外は明日も晴れそうな夜空だった。