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承認 5

星の子学園では、美穂が子供達を寝かしつけている。
既に時間は午後9時を廻っており、手伝いに来ていた女性達はそれぞれの家に戻っていた。
「絵梨衣先生とジュリアン君。帰ってくるよね」
不意に尋ねられて、美穂は一瞬間を置いた後頷く。
「直ぐに帰ってくるわ。神様にも、ちゃんとお願いしているから」
その返事に尋ねた少女は安心したのか、お休みなさいと言って目を瞑る。
彼女は先に眠っている子供達の掛け布団を直すと、静かに部屋を出た。

そしてドアを閉めた途端、その場にしゃがみ込んで膝を抱えたのだった。
「……」
泣かないつもりだったが、どうしても涙が止まらない。
だが、嗚咽を子供達に聞かれては不安感を与えてしまう。
手で口を抑えながら、彼女は教会へと走った。

誰も居ない教会に明かりは無い。
だが、悲しくなるとここへ駆け込むのが習慣になっていた美穂には、暗い通路でも慣れた場所だった。
そして彼女は祭壇の前で散々泣いて、ようやく落ち着きを取り戻す。

幼い頃は同じような行動をしても、後から幼なじみの少年が自分を探しにやって来た。
そして、やんちゃな幼なじみに手を握ってもらって悲しい事や辛い事に耐えてきた。
その後で彼の姉が二人をここで見付けて、彼女が二人の手を引いて部屋に戻る。
そういう事の繰り返しだったが、平和で穏やかな毎日だった。
しかし、ある年に幼なじみは目の前から居なくなってしまった。
後追う様に彼の姉も居なくなってしまう。

それからの美穂は一人で泣き、一人で耐え、一人で日常に戻るという生活をしてきた。