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承認 3

驚いたバレンタインが振り返った時、そこに居たのは三巨頭の一人ガルーダのアイアコスだった。
彼は拳を握りしめている。
「アイアコス様!」
「一人で無茶をやるな。
ここは俺が見張るから、お前はラダマンティスとミーノスを呼んで来い」
事情を知らない彼に、バレンタインはラダマンティスがパンドラと共に地上へ向かった事を言う。
「なら、ミーノスだけでいい」
アイアコスは焦る様子も無くバレンタインにそう命じる。
一人にさせて良いのか彼は考えてしまったが、今は命令に従うしかない。
バレンタインは一礼すると、急いでハーデス城へと向かった。

横目でハーピーの冥闘士が立ち去った事を確認すると、アイアコスは泥の中に踏み込む。
黒い泥は少しずつ彼の足を呑み込もうとしていた。
「余程、痛めつけられたいらしいな」
彼はそう言うと、泥の中で足を動かす。
「ギガースどもを蘇生させるのに、蛇を使ったのは拙かったな」
アイアコスは泥の中で自分の足を掴んでいた得体のしれない物を自らの両手で引きずり出す。
そして、そのまま上空に放り投げた。

「ガルーダフラップ」

異様な闇の生き物を相手に、アイアコスの必殺技が炸裂する。


聖域の一角にある聖闘士たちの慰霊地。
今は何もないその場所で、矢座のトレミーが深い溜息をついていた。
今まで信じてきた教皇は邪悪に支配された双子座の黄金聖闘士。
そして自分は彼の言うがままに、女神アテナに対して黄金の矢を打ち込むという大罪を犯した。
聖闘士としてあるまじき事。
だが、それは事実なのである。

静かなるその場所で彼が何度めかの溜息を漏らした時、いきなり大地に何らかの力が加わった。
上から何か押されたかの様に、彼の足元がのめり込んだのである。
「!!!」
そして僅かながら、彼のまとう聖衣が淡い光を放ちはじめた。

(後悔に捕らわれる前に、自分の使命を果たせ!)

耳元で聞こえてきた若い男の声。
トレミーが何者かと怒鳴ると、その声は『魔矢』と名乗った。