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証明 3

沙織は部屋の中央に立ち、呪術が完成するのを待つ。
既に光の紋様は頸にまで現れていた。
ムウやアルデバランはただ、術が完成するのを見届ける事しか出来ない。
しかし、どうにかして女神を助けたい。
彼らは考え続けたが、元々呪術の専門家ではない。
答えが出る筈が無かった。

氷に覆われた双児宮に、足音が響く。
沙織にはそれが誰なのか、すぐに判った。
「エリス……」
部屋に現れた争いの女神は、口元に笑みを浮かべていた。
だが、彼女は沙織に近付こうとはしない。
「まだ、術は完成していなかった様だな」
「……もうすぐ完成するわ……」
するとエリスは手に持っていた杖を床に一度だけ付ける仕草をした。
それと同時に、光で示される呪術の紋様が強く輝く。
沙織は身体に強い痛みを感じて、表情を歪ませた。
「アテナ!」
「女神様!!」
驚いたムウや星華が声を出す。
「……アテナ。苦しいか?」
エリスは静かに問いかける。
「……これは私の闘いです」
薄く笑う沙織。その表情は、何処か誇らしげだった。
「……そうだな。よくまぁ、今まで闘い続けた。
だが、本当にこれで全て終わるとは思っていないだろう」
二柱の女神の意味不明な会話。
だが、人間たちは誰も口を挟めなかった。
「……終わるとは思っていません。
だから、正直言えば此処で退場はしたくない……」
「……」
「ギガースたちは神々と人間が協力して、初めて倒せる存在。
このままでは、ギガースたちとの闘いで大勢の人々が犠牲になってしまう!」
沙織は思わず悔しくなって大声を出してしまう。
「腹立たしいか?」
「当たり前です!
これでは大地は守れても、彼らに支配される土地が出てきかねない」
「……それもそうだな」
エリスはいきなり沙織に向かって駆け出すと、あっと言う間に彼女の腕を掴んだ。
白い杖が強く光り出し、部屋中の紋様が点滅を始める。