小箱が閉じられた途端、黒い得体のしれないモノは霧散する。
「……なんだ。シュンレイは平気なのか」 争いの女神は驚くというよりも、何か残念そうな口ぶりだった。 しかし、当の本人は箱が内側から開けようとするパワーを感じて、そうはさせまいと両腕を回して胸に抱く様に蓋をしている。
「春麗。その箱を私に寄越すのだ」 シオンが駆け寄って箱を取り上げようとしたが、閃光が春麗とシオンの間に走る。 バチンという音と共に、シオンの手から血が流れ、春麗の服の肩口が少し切れた。
「闘士はシュンレイに近付くな!」 争いの女神の声に、シオンはすぐに一歩後退する。 エリスは姿が見えても、物が持てる状態ではない。 触ろうとしても、女神の手は春麗の身体を通過してしまう。
「お前達には扱いきれないモノだ。 とにかくアテナに会ってくるから、大人しくしていろ!」 争いの女神は白い杖を持ったまま、白羊宮の方へ歩き出した。 |