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誓い 5

聖域で起こったクリュタームネストラーとヘレネの事件。
スパルタの王妃レダは、娘達を失ったショックで女神ネメシスと完全に同化してしまう。
女神の知識を手に入れた彼女は、聖域と世界に対して復讐を決意した。

まず初めに行ったのは、女神ヘラと女神アフロディーテにそれぞれ贈り物をして、失った娘達によく似た人形を作ってもらう事だった。
女神ヘラが聞き届けたのは、自分を妻とした男を確実に王位につかせる宿命を持った人形。
女神アフロディーテが聞き届けたのは、世界で一番美しい人間の女性と呼ばれる人形。
何故なら、死んだ二人の娘はそういう運命の星の下に生まれていたから。
そして二柱の女神は、聖域に君臨するアテナに対して秘密にして欲しいと言う条件に気をよくして、願いを聞き届けた節があった。

女神ヘラの息子であり女神アフロディーテの夫である神ヘパイストスの協力により、本人達によく似た人形がスパルタへとやって来る。
長い間不在だった王女達の帰還に、スパルタの兵士も民も喜んだ。
驚いたのは実の兄であるカストールとポリュデウケース。
だが、彼らは沈黙を守る。
聖域の罪を露わにするわけにはいかなかったからである。

そして静かにレダの謀略が始まった。

数年後、クリュタイムネストラーの宿命を強欲なアガメムノンにうっかり漏らすふりをする。
そしてアガメムノンがクリュタイムネストラーの夫であり自分の従兄弟だったタンタロスを葬る様に仕向けた。
妻のそのような復讐をスパルタの王であるテュンダレオースは知っていたが、彼もまた二人の娘を失ったのである。
強いて止めないと言う方法で、彼女の復讐を助けた。

一度、権力を手に入れたアガメムノンは自分の欲望が押さえられなくなっていった。
何しろ弟に嫁いだヘレネに対して、トロイアの王子であるパリスが横恋慕していると知ると、トロイア攻撃の大義名分を得る為に、わざと城の警備を手薄にしてパリスにヘレネを誘拐させたくらいである。
一方パリスは自分の守護についている女神アフロディーテの加護だと考えており、この恋は女神より約束され祝福されていると思い込んでいた。
しかし、それは錯覚に過ぎなかった。

そしてトロイア戦争の幕は切って落とされる。
女神ネメシスも加担する、全ての英雄と呼ばれる存在を滅ぼす策略が動き出した瞬間だった。