INDEX

誓い 4

「蟹座。祈りの言葉は終わったのか?」
辺りを包む沈黙に、ポリュデウケースは挑発的な言葉を投げかける。
「誰が何だって!」
怒鳴りながらもデスマスクはその場から離れた。

だが、今度は先を読まれていた。

ポリュデウケースの拳がデスマスクの身体に衝撃と激痛を与える。
「!」
しかし、彼はそのまま倒れたりせずに素早く敵から離れた。
「私の拳を受けて立てるとは、なかなかやるな」
「打たれ強いんだよ。 どっかの誰かが鍛えてくれたからな」
腹を押さえながら、デスマスクは精一杯の厭味を言う。
「ならば、今度は確実に動けなくしてやる」
そう言うポリュデウケースの表情は、非常に嬉しそうだった。
だが、デスマスクは正直言って立つのすら辛かった。
(こっちは黄金聖衣をまとっているのに、なんて威力だ)
相手の拳はまるで聖衣の存在をものともしない。
そして敵は、蟹座の黄金聖闘士の前に右手を出す。
「この妖気に満ちた場所で平気で動かれては、多少荒っぽい封印にせざるを得ないが……」
その言葉を聞いた瞬間、デスマスクはポリュデウケースが自分を簡単に封印する気がない事を察した。

(これは……逃げられない……)

彼が覚悟を決めた瞬間、ポリュデウケースの右手を目指してバラが飛んでくる。
「その男は狡猾だ。 封印如きでは押さえ込めない事くらい、判っているだろう。
ポリュデウケース」
闇の中から現れたのは、魚座の黄金聖闘士アフロディーテ。
この時、デスマスクは同胞の酷い言い分に腹を立て、神である敵は眉をひそめた。


再び闇の闘士の姿を見た時、アフロディーテは確信する。
── この瞬間の為に、私はあらゆる罪を背負ってきた ──
彼は薄く笑った。


そして対するポリュデウケースもまた、自分の知っている魚座の黄金聖闘士とは何処か違う小宇宙を感じて、ある事を思い出した。
「……本当に、この時代は懐かしい顔ぶれが多いな……」
アフロディーテは表情を変えずに、じっとポリュデウケースの事を見る。
「よもや女神アフロディーテの本当の息子が、魚座の黄金聖闘士をやっているとは思わなかった」
ポリュデウケースの言葉に、デスマスクは自分の耳を疑ってしまった。