「えっ????」
すると今度は先程までいた海底神殿の一室ではなく、何処かの洞窟の様な場所に彼女は座り込んでいた。 「な……何が起こったの……」 周囲を見回したが、辺りはしんと静まり返っている。
「テティスさん。星矢さん」 先程まで一緒にいた人の名を呼ぶ。 しかし、何の反応もない。 静かすぎる様子に、春麗は何か得体のしれない恐怖を感じた。
「海将軍さん!」 彼女がそう叫んだ瞬間、洞窟内に幾つもの蒼い光の柱が立ち上った。 あまりの眩しさに春麗は目を開けて居られない。 だが、その強い光は徐々に威力を弱める。
圧倒的な力を感じなくなった時、彼女は恐る恐る目を開けた。
「……」 春麗のいた場所が、ふたたび変わる。 今度は何処かの浜辺だった。
彼女の周囲には幾つもの青白い光の柱があった。 そして彼女の背後には、一柱の神が立っていた。
ポセイドンは異空間に擬似的に作られた浜辺にやって来た。
そこには懐かしい女神達と一人の人間の少女がいた。 『娘の声にほだされたか。ネーレイデス達よ』 海妃アムピトリーテの姉妹達であるネーレイデスは、各々が力ある海の女神達だった。
だが、見回しても自分の妻と妹の一人であるテティスの姿が見えない。 そして人間の少女は、戸惑いながら自分の事を見ていた。
光の柱の一本が、揺らめく。
春麗にはこの現象の意味が判らなかったが、ポセイドンには判っていた。 『娘よ。ネーレイス達の問いに答えよ。 何故、海将軍に助けを乞うた』
状況のよく判らない春麗としては、自分の返事によって何が起こるのか見当がつかなかったが、 とにかく老師の教えに従って誠実に答える。 「……海将軍さんは、私を聖域に返してくれると約束してくれました。
だからその言葉を信じています」 別の柱が揺らめく。 『裏切るとは考えなかったのか?』 「それを考えたら……、最初から信じない方が良いです。
でも、自分の考えで決めたのです。 だから最後まで信じます」 するとポセイドンは薄く笑った。 |