春麗はテティスの手を取ると自分の両手で包み込み、祈りを捧げるように女神の目覚めを願い続けている。
本当なら今すぐ聖域に戻りたい。 だが海将軍たちは自分を信頼して眠り続ける女神を託してくれたのである。 ここでその信頼を裏切る訳にはいかない。
春麗は星矢に対してはもっともらしい理由を言ったが、本当は聖域に戻って紫龍の無事を確かめたかった。 (紫龍……) しかし彼の傍に自分が居ても、何の役にも立たない事も判っている。
むしろ盾となってくれた海将軍のひとのように、自分が居た所為で紫龍や他の闘士を危険な目に遭わせてしまうかもしれない。 不意に涙が零れた。 (やっぱり……、もう一緒に居ない方がいいのかな……)
自分が無事である事を喜んでくれた彼に、自分が出来る事は何なのか? 「……テティスさん……」 春麗は彼女の手を握りながら、優しかった女神に呼びかけた。 |