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武神 1

冥界とタルタロスの位置関係は地上と天上界くらい離れており、そもそもタルタロスに落とされた存在は既に最終判 決が下った者達である。
故に繋がっている門はギガースたちを外へ出さない様に何重にも罠がしかけられていた。
しかし、あまりにも完璧な密閉空間にしてしまうと、逆に冥界側から最終判決をくだされた罪人を、そこへ落とす事が 不可能になってしまう。
その為、冥界側から落とす為の場所と言うものが設定されているのだが……。

岩以外何も無い冥界の荒野。 見渡す限り同じ風景。
そこにサイクロプスのギガントは、やって来た。
自らの内側から聞こえる声。
その声は、この場所で封印を解けと言う。
「封印……」
既に、それをどうすれば解けるかは判っていた。
必殺技であるビック・ナックルで、冥界の地に拳を叩きつける。
「……これだ……」
彼は抉られた大地から、太い鎖が覗いている事に気が付いた。
「これを引っ張れば、門の第一の封印が解ける……」
そう呟きながら鎖を持った時、誰かが彼の肩を掴んだ。

「ギガント。まだ正気ではなかった様だな……」

そこに立っていたのは、ハーピーのバレンタイン。
ギガントの様子が、あっさりと平常に戻った事を逆に怪しんで、彼の後を付いてきたのである。


聖域での巨人との戦闘が一段落付くと、クリシュナとカーサは海底神殿へ急いで向かった。
聖闘士達に煩い事を言われなかったのは幸いだった。
変な所で手間をとるのは、彼らも避けたかったからである。

「凄い奏者だな。 セイレーンに教えたいものだ」
クリシュナの言葉にリュムナデスのカーサも同意する。
「ただ、あいつがこの事を知ったら、煩い事になりそうだ」
カーサの言葉にクリシュナは苦笑した。
「しかし、カストールの奴。
よりによってあんな場所を出口に設定するとは、シードラゴン並に根性が悪いぞ
「文句を言うものではない。 向こうだってワザとでは無いのかもしれない」
クリシュナは冷静に返事をするが、それでもカーサはまだ怒りが収まらない。
「シードラゴンと同じ顔をしているんだ。
絶対にワザとだ!」
理由にならない理由にクリシュナは返事のしようがなかった。