人馬宮の闇より迸る冷気は、雨に打たれていた黄金宮を次々と凍らせ始める。
魔羯宮や宝瓶宮・双魚宮はもちろんの事、天蠍宮から天秤宮・処女宮へと冷気は全てを凍りつかせながら階段を駆け降りる。 そして双児宮もまた、その変異に呑み込まれる。
「これは……」 壊れようとしていた部屋の中にいた沙織達は、この現象に驚くしかない。 雨漏りしていた所も凍りつき、逆に新しい壁が出来たかの様に魔方陣の現れ方が安定したのである。
「カミュか……」 「そうだと思いたいですね」 壁や天井を固定してくれている氷は、魔方陣の光を受けてキラキラと輝く。 そして出入り口に現れていた赤い光は、他の魔方陣が安定した為に周囲の影響を受けて縮小化し始めていた。
「これはいったい……」 氷に覆われた白羊宮を見て、紫龍は驚きの声を上げてしまう。 しかし、氷河は懐かしそうな表情をした。 「我が師カミュの小宇宙を感じる……」
この現象を見た事で、氷河は自分の師匠が無事である事を確信する。 ただ、人馬宮にいるはずの絵梨衣が驚いて怖がっていないか、それだけが心配だった。 |