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続・条件 6

呪術というものは本来、術者自身でも支配出来るかどうか判らない危うさが存在する。
上手くいったと思っても、実は別の部分で非常に危険な事態を引き起こしている事があるのだ。
沙織たちはその危険な部分と言うものを、まざまざと見せつけられていた。

『……』
牡牛座の黄金聖闘士が与えた一撃。 光に満ちた力を、異形の巨人は実体化しつつある身体に喰らったのである。
そのまま身体は粉砕され、双児宮の壁に激突する。
そしてその身体の上に赤い光の魔方陣が浮かび上がり、巨人の身体を拘束する。
『……』
絶叫する異形の敵。
沙織と星華は赤い魔方陣に見覚えがあった。
(これは先生に襲いかかった呪術!)
あの時は絵梨衣が身を挺して女神を守った。
だが、今は巨人に手を差し伸べる者は居ない。
徐々に巨人の身体は土塊の様になってゆく。
しかし、彼は尚も暴れ続けた。

「闇より蘇った身体に、その光は辛いでしょうね」
沙織はパラースを見たまま、アルデバランに動くなと言う仕草をする。
『……』
野獣は怒りに満ちた表情で叫び声をあげる。
星華は思わず耳を塞いだ。
だが、沙織は平然と滅びゆく敵を見ていた。
異形の巨人パラースはもがき暴れるが、壁から離れる事がない。
だが、双児宮の壁と床の耐久度は限界にきていた。 壁に深い亀裂が入る。
彼は最後の力だとばかりに沙織をその口で喰らおうと首を伸ばす。
「アテナ!」
とっさにムウとアルデバランは沙織の前に立とうとしたが、赤い光は巨人の最後の足掻きを土に変えた。
沙織は微動だせずに、神話時代からの宿敵を見る。
「パラース。 あなたの負けです」
沙織は一言そう告げると、手に持っていた棒でパラースの頭の部分を横に払う。
完全なる実体化が出来ていなかった巨人は、その衝撃で身体が砂の様にサラサラと崩れ去る。
そして最後には砂の山へと変貌し、床の亀裂から下へ落ちていった。

信じられない様な出来事を目の当たりにして、星華はしばらく呆然とする。
その時、頬に冷たいものを感じた。
「?」
手に触れ、それが水滴だと判ると彼女は天井を見る。
既に双児宮全体が傷付けられており、雨漏りしているのである。
水滴は規則正しく落ち始めていた。