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続・条件 4

(パラースに気付かれたら大変だわ……)
沙織もムウも、敵が自分達を攻撃しているうちは人馬宮にいる絵梨衣は無事だと思いたかった。
だが、このような状態では、ムウがクリスタルウォールを解除して闘う事は出来ない。
星華がただでは済まないからだ。
沙織は持っている棒をきつく握った。
そして異形の巨人は、何度もクリスタルウォールを壊すべく体当たりを繰り返していた。

最初は体当たりの度に影が分散されていたのだが、徐々に質量を伴ってクリスタルウォールの壁に振動を与える。
しかし、完璧な強さを誇るクリスタルウォールはびくともしない。
むしろ双児宮の壁の方にヒビが入り始めたのである。
「ムウ。ここは私がくい止めます。 貴方は星華さんを脱出させなさい」
沙織は壁の様子を見て、素早く判断する。
「アテナ!」
「パラースはギガントマキアにおいて、私が倒しました。
彼の邪悪な野望を、私は何度でも打ち砕く義務があります」
既に異形の巨人は安定した形をとりつつある。
迷っているうちに双児宮の壁が壊されて、呪術が暴走すれば術媒体となっている女神の努力は無駄になる。
ムウは厳しい眼差しで、暴れている敵を見た。

その時、今まで青ざめて震えていた星華が声を上げる。
「誰か来ます!」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、双児宮の部屋の隅に金色の光が舞い降りた。
とっさに沙織はしゃがみ、ムウはクリスタルウォールを解除して星華を床に伏せさせる。

「グレートホーン」

不意に食らった黄金聖闘士の力に、パラースは実体化しかけた身体を粉砕されてしまう。

そこに居たのは牡牛座の黄金聖闘士アルデバラン。
彼の聖衣から黄金の光が溢れていた。