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「ラダマンティスならば、護衛としての任務は絶対に果たすでしょう」
そう言いながらも、ミーノスが彼を推す理由は別な意味もあった。 一つはパンドラに黒の短剣を使われては護衛が他の闘士であった場合、彼女を止められないという事だった。 それならば、彼女の目の前で滅びようとしていた男の方が抑えが利く。 ラダマンティスは何かを言いたそうな態度を取ったが、自分の右手を見た後ミーノスに対して『判った』と一言だけ告げた。 女主人にもそれだけを伝えたが、彼らにはそれ以上に重要な事があった。 護衛はギガースに奪われる事を阻止出来る者だが、奪われそうになった時は彼女を葬り去る事が出来る者でなくてはいけない。 出来るかどうかではなく、護衛役はやらなければならない。 人質となった敵の総司令官に、地母神ガイアとギガースが礼節を持って接するとは思えなかったからである。 冥王の最も大事な存在を手にかけるのだ。 全冥闘士たちが只ではすまない事は判っていたが、ギガースに後れをとった時点で彼らの負けである。 ならば最後まで彼女を守り続ける事を彼らは選んだ。 パンドラはラダマンティスとミーノスを交互に見る。 「お前達がそう言うのなら、もう反対はしない……」 そう言って彼女は、涙を堪えながら黒の短剣を胸に抱きしめた。 |
そして地上へと戻ったパンドラは、本当なら直ぐにでもハインシュタイン城に戻った方が良いというのは判っていた。 だがその反面、この冥界へと続く小屋の入り口から離れたくはなかった。 (絶対に無事でいてくれ……) もう誰一人欠ける事無く、冥界を守ったと報告に来て欲しい。 パンドラは振り返ると冥界へ続く小屋の扉を見た。 「来た様だな」 エリスの言葉に、パンドラは自分達の方へ歩いてきた聖闘士達を見た。 |