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「……ところで、エリス。
その箱で何をするのだ?」 パンドラの問いかけに、エリスは手に持っている箱に視線を移す。 そういう彼女も、ハーデス城から小さな可愛らしい袋を持ってきていた。 「……一応、呪術を施して、ある場所に満ちている力を封じる器にする」 「力?」 しかし、エリスは答えず彼女の顔を見ている。 「……とにかくパンドラは、このハインシュタインから離れるな。 森の結界が一応、お前を守ってくれる」 争いの女神に言われて、彼女は少し不機嫌な顔をする。 だが、エリスは気にも止めなかった。 そして今度はラダマンティスの方を向く。 「ワイバーン。絶対にパンドラを城から出すな。 否、パンドラから離れるな」 念を押す台詞に、彼は素直に頷いた。 |
今や冥界はギガースの野望を阻止すべく、冥闘士たちが臨戦状態になっている。 だが、パンドラに冥界にいられては戦力を割かねばならない。 ギガースは聖闘士や海闘士達の反撃をくらえば、確実にタルタロスの門を抜けて冥界へやって来る事が判っているからである。 ただでさえ先程の一件で数名の冥闘士を失っている。 そしてその原因を作ったのが、地母神ガイアだというのだ。 かなり厳しい状態に追い打ちをかける事になるので、ラダマンティスとミーノスが二人がかりでパンドラに地上に戻る様説得した。 幾ら支配者の力を持つ黒の短剣を持っているとしても、パンドラは総司令官であって闘士ではない。 そして地母神ガイアが冥王を押さえ込む為に、パンドラの存在をギガースたちに教えている可能性が高い。 冥闘士たちはパンドラを、貪欲なギガースに奪われるわけにはいかなかった。 パンドラは初めは冥界にいる事を望んだ。 だが、もう時間がなかった。 アイアコスが未だに戻らないという事も、かなり戦力的に厳しい。 たった一人しか護衛に付けられないという事で彼らの苦悩を理解しろと、彼女はエリスに言われてしまう。 悔しそうに俯くパンドラにミーノスが告げた護衛役はラダマンティスだった。 |