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条件 3

シオンは白羊宮の前に立つ。
弟子のムウと牡牛座のアルデバランが女神の傍にいる筈だが、呼びかけても何の返事もない。
(ポリュデウケースは、本当に我々の事を調べ尽くしている……)
黄金聖闘士たちの秘められた力を見定める為に、もしかすると考えられない様な敵を用意して、闘わせたかもしれない。
(これが不死なる者との闘いの厳しさなのだろう……)
そして再び考える。
(我々人間は、永久に勝てないのか?)
どんなに手を尽くしても、地上に災いをもたらす神と闘い続けるのは難しい。
なぜなら聖域は全滅こそ免れて綿々とその使命を果たし続けているが、情報の欠落は避けられない。
過去の聖戦においても、数多くの命が失われた。
この時に、彼らの持つ知識もまた失われてしまったのだから。
しかし、神はその情報を維持して、次の闘いに望む。
(だが、勝たねばならない……。どのような犠牲を払おうとも)
シオンは厳しい眼差しで、白羊宮の奥を見つめた。


エリス達がアテナの箱を持ってハーデス城からハインシュタイン城へ帰還した時、ちょうど一輝とエスメラルダは荷物を片付けている最中だった。
エリスは変わらずだがパンドラは沈んだ表情をしており、背後にいたワイバーンの冥闘士は何処か殺気だっている。
そして彼の部下がやって来る気配がない。
一輝の表情も自然と険しくなる。
「休息をとらせたか?」
エリスは二人に近付きエスメラルダの方を見た後、一輝に尋ねた。
「あぁ……」
争いの女神の問いに、一輝は自分の推測が当たっていた事を知った。
「ならば、聖域に戻るぞ。 こっちの用件は終わった」
ところが、辺りを見回しても関係者が二名足りない。
「アンドロメダと牡羊座の弟子はどうした?」
「冥闘士と一緒に城の方へ行った。 呼んで来よう」
バスケットを持って城の方へ向かう一輝に、ポットとカップを持ったエスメラルダがちょこちょこと後を追う。
パンドラはそんな二人の後ろ姿を見つめている。
ラダマンティスはパンドラに視線を向けた後、自分の右手を見た。