子供達に夕食を取らせて、美穂はひとり台所でぼんやりとしていた。 小さい子達については、手伝いに来てくれた近所の人たちが手分けして食べさせてくれている。
自分は少し休んだ方が良いと言われたが、そういうわけにもいかず台所の椅子に座っていた。 (何か……、疲れちゃった……) 頑張らなければというのは判っている。
しかし、何処まで、何時まで頑張ればいいのかが判らない。 (絵梨衣ちゃん……。ジュリアンさん……) 堪えていた涙が再び零れる。 (星矢ちゃん……)
今、この瞬間に、幼馴染みの少年に大丈夫だって言って欲しかった。 そう言って貰えたら、また頑張れる様な気がする。 その時、自分の肩に暖かなショールが掛けられた。
「あっ……」 今日、初めて手伝いに来た女性がそこに居た。 「何かありましたか?」 美穂は慌てて立ち上がった。 しかし、女性は再び美穂を椅子に座らせて、台所を使い始めた。
彼女は女性のショールを、まじまじと見る。 とても柔らかで手の込んだ模様が織り込まれている手作り品だった。 「ご自分で作られたのですか?」
美穂の問いに、女性は笑って頷いた。 そして女性は美穂の前に、今自分が作っていたココアを差し出した。 「ありがとうございます……」 すると女性はニコニコとしながら、美穂の前に座った。
「……凄いですね」 かなり時間がかかっただろうなと判る細工の細かさだった。 美穂は何気なく言葉を続ける。 「……彼女がこのショールを見たら、きっと対抗意識を燃やして大変な事に……」
そう言いかけて、一瞬頭の中が真っ白になった。 (……誰が対抗意識を燃やすの? 絵梨衣ちゃん?? でも、絵梨衣ちゃんは見たがっても、絶対に作るとは言わないし……)
ショールをじっと見ている美穂を、女性はどうしたのだろうかと言う表情で見ていた。 |