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魔星 6

「ラダマンティス様……。パンドラ様に……お伝えくだ……」
名前を呼ばれて、パンドラが前に出る。
「私はここにおるぞ」
だが、彼は応答をしない。もう聞こえていないのかもしれない。
「不甲斐ない……闘士で……申し訳……ありま……せ……」
「いや、お前たちはよく闘った。 お前たちの努力は無駄にはしない」
「どうか……」
「また、魔星を持って私のもとに来るのだ。よいな」
しかし、部下は何も言わない。
ただ、周囲に白い光が集まり、彼らの姿を包む。
そして光が消えた後、そこにはオブジェの形態となった冥衣たちが残っていた。

しばらくの沈黙の後、最初に口を開いたのはミーノスだった。
「よもやギガースが関わるとは、最悪の展開ですね」
彼はラダマンティスに話しかけたのだが、返事が無い。
「ラダマンティス?」
意識を失っているのか、それとも彼の滅びが着々と迫っているのか。
ミーノスは彼を廊下に座らせ、壁に寄り掛からせた。
「ラダマンティス様」
バレンタインたちも駆け寄ったが、だからといって彼らに出来る事など無い。
そこへ地下牢から見張りをしていた、冥闘士たちがやってきた。

パンドラは目の前で消えようとしている男を見た瞬間、ほとんど反射的に行動を起こす。
いきなり駆け寄って、ラダマンティスの左手を両手で持つと、叫んだのである。
「ハーデス。私の声が聞こえるか。
これ以上冥闘士たちを使い捨てるような真似は、姉である私が許さない。
この私の言葉が判るのなら、今すぐ私のもとに戻れ」
彼女は大勢の冥闘士たちの前で、祈るようにラダマンティスの手を掴んでいる。

しばしの静寂の後、ラダマンティスの右腕から黒い光が立ち上り、彼のワイバーンの冥衣が復活を果たした。
今までほとんど息をしていなかった男が、大きく深呼吸をする。
そして、その光は空中で短剣の形をとると、そのまま床に突き刺さった。

他の冥闘士たちの間にざわめきと安堵感が広がる。
隣に居たミーノスは立ち上がると、全冥闘士たちに号令を出した。
「ギガースがこの冥界を通って、地上へと出ようとしているとの情報が入った。
全員、緊急体勢を取れ」
その言葉に、冥闘士たちは一斉に行動を開始した。