神の力を得たグレイテストコーションの威力は、ハーデス城の中から闇を吹き飛ばした。 先程まで周辺を支配していた闇も、忌まわしい気配も既に無い。 だが、ラダマンティスの冥衣はほとんど砕け、右腕もまたズタズタになっていた。
赤い血が流れている。 「ラダマンティス!」 「ラダマンティス様!!」 ほぼ、同時に上がった叫び声。 ミーノスが倒れそうになる彼を素早く支えた。
「すまないが……、あいつらの所へ連れて行ってくれ……」 その言葉にグリフォンの冥闘士は頷いた。 「ラダマンティス」 パンドラは自分の前に居たバレンタインの背中を押して退かすと、ラダマンティスに駆け寄る。
バレンタインはハンドラを引き止めようとしたが、それをエリスが止めた。 「お前たちの女主人のやりたいようにさせろ」 そしてエリスは再びラダマンティスたちの方を向いた。
「ラダマンティス!」 パンドラは彼の身体に触れたかったが、その右腕を見て後ずさりしてしまう。 「パンドラ様、お戻り下さい……」
痛みをこらえた言葉。 彼女は首を横に振る。 ミーノスは何も言わずに、ラダマンティスを廊下に倒れている部下たちの元へ連れていった。
「ラ……ラダマンティス……様」
部下の一人が薄く目を開けた。 だが、立つ事が出来ないのは明らかだった。 「お気をつけ……下さい。 この闇は、ギガース……に、力を……」 部下の息も絶えだえな報告に、その場に居た者たちは衝撃を受ける。
エリスが素早く前に出て、部下の前にしゃがみ込んだ。 「地母神ガイアがギガース共を蘇らせたのだな」 しかし、部下はエリスの問いに答えない。
「この者は我々の味方です。言いなさい」 咄嗟にミーノスが助け船を出す。 するとその冥闘士は、頷いた。 「闇の中で……気配を……。 あれは確かに……」
「これで判った。相手が地母神ガイアでは、冥衣たちがお前たちを支配しようとしたのも頷ける。 あの女神は、お前たち闘士の心を知らぬうちに支配する術を持っている可能性があるからな」
エリスは立ち上がる。 重要な報告をした部下は、既に目を開ける事も辛そうだった。 |