その瞬間、闇がパンドラとミーノスに襲いかかり、火花が飛び散るような音と閃光が走った。
「ラダマンティス!」 気がつくと自分の事を覗き込む、男の顔。
パンドラは一瞬、何が起こったのか判らなかった。 実は、糸は確かに切ったのだが、その力の逆流をミーノスが一手に引き受けて、彼女を弾き飛ばしたのである。
そして、彼女が壁と激突する寸前にラダマンティスが身を挺して守った。 本当に一瞬の出来事だった。 「まったく、お前たちの精神力には恐れ入るな」
エリスはそう呟く。
ラダマンティスはパンドラが無事な事を確認すると、部下に彼女を託した。 ミーノスは立ってはいたが、グリフォンの冥衣にヒビが入っている。
「パンドラ様。貴女の黒い短剣をお借りします」 「ラダマンティス!」 「あれでなくては仲間を救えません」 彼はそう言って、廊下に取り残された黒い短剣に近付く。
「ラダマンティス。止めるのだ」 パンドラはバレンタインたちの制止を振りほどこうとしたが、彼らもまた上司の命令を絶対として彼女を近づけさせない。
「あなたで駄目だったら、私が引き継ぎます」 ミーノスの言葉にラダマンティスは不敵な笑みを浮かべる。 「お前に譲る気はない」 そう言って、彼は黒い短剣を拾った。
|