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魔星 2

その瞬間、闇がパンドラとミーノスに襲いかかり、火花が飛び散るような音と閃光が走った。

「ラダマンティス!」
気がつくと自分の事を覗き込む、男の顔。
パンドラは一瞬、何が起こったのか判らなかった。
実は、糸は確かに切ったのだが、その力の逆流をミーノスが一手に引き受けて、彼女を弾き飛ばしたのである。
そして、彼女が壁と激突する寸前にラダマンティスが身を挺して守った。
本当に一瞬の出来事だった。
「まったく、お前たちの精神力には恐れ入るな」
エリスはそう呟く。

ラダマンティスはパンドラが無事な事を確認すると、部下に彼女を託した。
ミーノスは立ってはいたが、グリフォンの冥衣にヒビが入っている。
「パンドラ様。貴女の黒い短剣をお借りします」
「ラダマンティス!」
「あれでなくては仲間を救えません」
彼はそう言って、廊下に取り残された黒い短剣に近付く。
「ラダマンティス。止めるのだ」
パンドラはバレンタインたちの制止を振りほどこうとしたが、彼らもまた上司の命令を絶対として彼女を近づけさせない。
「あなたで駄目だったら、私が引き継ぎます」
ミーノスの言葉にラダマンティスは不敵な笑みを浮かべる。
「お前に譲る気はない」
そう言って、彼は黒い短剣を拾った。


先の聖戦のおり、三名の冥闘士が聖闘士により冥衣を奪われるという一幕があった。

魔星を持たぬ者に従ったデュラハン・ゴーゴン・エルフの冥衣たち。
だが、復活した三名の闘士は冥衣の力に呑み込まれた時、ようやっと何故そのような事が起こったのかを理解した。
彼らは冥衣の力を制御出来なかったのだ。
冥界の秩序を守り、冥王の配下として生と死の道理を守る。
この絶対的な事柄に関われるのは、冥王により選ばれた闘士のみ。
だが、己の分を過信すれば冥王はあっさりと闘士たちを切り捨てる。
その時に、冥闘士たちは自らの運命だと悟るか、それとも何かの間違いだと足掻くか。
問題はそこだった。