(本当の事がどんなに残酷な姿であろうと、こいつさえ居てくれたら……)
シャイナを担いだまま、ミロは迷宮の様な通路を駆け抜ける。
その時、二人は何かがまとわりつく気配を感じた。
「……見張られているのか?」
ミロは立ち止まると、周囲を見回した。
しかし、気配はすれども生き物の影は無かった。
(……今はとにかく外へ出よう。 そうすればシャイナだけは逃がせる)
ミロのただならない様子は、当然シャイナにも伝わる。
「ミロ。ここはあたしがくい止める」
自分から下りようとする彼女を、ミロは再び担ぐ。
「大人しくするんだ!」
怒鳴られて、シャイナは一瞬身体を縮ませた。
何故、この蠍座の黄金聖闘士が白銀聖闘士の自分を守ろうとするのだろうか。
その理由が彼女にはさっぱり判らない。
そしてミロはと言うと、バツの悪そうな表情をしてそっぽを向いてしまった。
「敵は俺が引き受ける」
ミロはそう言って不敵な笑みを浮かべると、再び駆け出す。
シャイナはミロの背後に広がる闇を見た。
今まで通ってきた道だと言うのに、既にそこは暗黒に呑み込まれていた。
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