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続・露顕 5

(本当の事がどんなに残酷な姿であろうと、こいつさえ居てくれたら……)
シャイナを担いだまま、ミロは迷宮の様な通路を駆け抜ける。
その時、二人は何かがまとわりつく気配を感じた。
「……見張られているのか?」
ミロは立ち止まると、周囲を見回した。
しかし、気配はすれども生き物の影は無かった。
(……今はとにかく外へ出よう。 そうすればシャイナだけは逃がせる)
ミロのただならない様子は、当然シャイナにも伝わる。
「ミロ。ここはあたしがくい止める」
自分から下りようとする彼女を、ミロは再び担ぐ。
「大人しくするんだ!」
怒鳴られて、シャイナは一瞬身体を縮ませた。
何故、この蠍座の黄金聖闘士が白銀聖闘士の自分を守ろうとするのだろうか。
その理由が彼女にはさっぱり判らない。
そしてミロはと言うと、バツの悪そうな表情をしてそっぽを向いてしまった。
「敵は俺が引き受ける」
ミロはそう言って不敵な笑みを浮かべると、再び駆け出す。

シャイナはミロの背後に広がる闇を見た。
今まで通ってきた道だと言うのに、既にそこは暗黒に呑み込まれていた。


巨人の中の一人が言う。

少々暴れて、小賢しい聖闘士どもを女神アテナの前で血祭りにあげてくる。
その血を糧に力を蓄えるのも悪くはない……。
完全体で外へ出るのは、それからでも良かろう。

この意見に、もう一人の巨人が賛同した。


「残るは、あと4人……」
黒い聖域の魔羯宮にて、彼は満足そうに笑う。
山羊座のシュラを、たった今封印し終えたからだ。
しかし、直ぐに険しい表情になった。
戦闘の最中に感じた爆発。 あの時、この空間は確かに震えた。
(何か予定外の事が起こったのか……)
ならばそれを補う呪術を施せばいい。
彼は宮を出るべく歩き出した。
「……」
そして、自分の中のサガは何の反応も示さない。
(本当に消滅したのか?)
自らの内側に目を向けようとした時、彼は周囲に漂う気配に気付いた。
(巨人族の奴らが此処に目をつけようとも、この地には入らせない)
ここは女神アテナの眠りを覚まさせないように、長年に渡って呪術を組み込んで鉄壁の要塞にした場所 。
だが、その呪術は大量の人間を犠牲にしなければ完成しないと言う代物だった。
だから彼は神話の時代、聖域を押さえこんでトロイア戦争を止めさせなかった。
「全てを終えたら讃えてやろう。愚かな者たちの献身を……」
彼は嘲笑うつもりだったが、その眼差しは怒りに満ちていた。