だが、ダイダロスを目の前にして逆にミロは何と言って尋ねたら良いのか困惑してしまった。 直接的な聞き方をしては、相手に悟られてしまうかもしれない。
「どうしたのですか?」 ダイダロスに尋ねられて、ミロは磨羯宮に用事があったからだと言い訳をする。 だが、もしその通りなら、逆にダイダロスを呼び止める必要はない。
と、そこへ磨羯宮の主が早い足どりで階段を下りてきた。 「何をやっているんだ?」 妙な組み合わせに山羊座のシュラは首を傾げる。 するとダイダロスは素直に自分の用件を伝えて磨羯宮を通る許可を貰う。
シュラは苦笑しながら了承した。 彼もまた、巨蟹宮へ行く途中だったと言う。 デスマスクは不在ではないのかとミロが尋ねると、 「不在だから行くんだ」
と、シュラは意味不明な返事をした。 「それでは、私は先を急ぎますので」 ダイダロスは二人の黄金聖闘士にお辞儀をすると、そのまま双魚宮を目指して階段を上がってゆく。
ミロは一瞬ダイダロスを引き止めようとしたが、それこそ引き止める建前が見つからない。 彼は伸ばそうとした手を慌てて引っ込めた。
「ところでミロ。随分あちこちに出没しているらしいが、もう聖域の探索はしないのか?」
シュラの質問に、ミロは頷く。 迂闊にまた外を走り回って、昨日の様な目に遭うのは真っ平だったからである。 「まぁ、慣れない内は大人しくしておいた方がいい。
見たくないものを見てしまう事があるからな」 「!!!」 そういう忠告は、最初に言ってくれとミロは叫びたかったが、起きてしまった事をとやかく言っても仕方がない。
「シュラはそんな場面に出くわした事あるのか?」 内心ドキドキしながら、ミロは冷静さを装って尋ねる。 「……何かあったのか?」 シュラに尋ねられて、ミロは、
「何でもない!」 と言って階段を駆け上がった。 天蠍宮に戻れば、もう一度シュラと顔を会わせる事になるから。 今はとにかく、この場から離れたかった。
「何かあったのですか?」 ミロは双魚宮の入り口でダイダロスにそう尋ねられた。 思いっきり駆け上がったので、あっと言う間に双魚宮に辿り着いてしまったのだ。
宝瓶宮の黄金聖闘士が不在だったのは、不幸中の幸いだったかもしれない。 ミロとしては呼び止められては、誤魔化す事が出来るかどうか怪しかったからである。
「ダイダロスに聞きたい事がある!」 半分ヤケになっていると思われても仕方のないような大声。 自分の中の感情の抑えが利かない。 しかし、ミロは直ぐに続きを言えなかった。
「うるさい!」 気付くと魚座のアフロディーテが怒りの形相で、ミロとダイダロスの事を見ていた。 |