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続・露顕 1

結局、あの悩みはいったい何だったのだろうかと言いたくなるような事を、数時間後に彼は自分の従者の男性から聞く事になる。
今、十二宮にいる黄金聖闘士は獅子座のアイオリアと自分と山羊座のシュラ、そして魚座のアフロディーテしか居ないと言われたのだ。
従者たちには従者たちのネットワークがあって、自分の主人が円滑に生活が出来るように色々と準備をしてくれる。
それ故に秘密裏な事でもない限り、従者たちは相手が不在と言う事で自分たちの主人が何かしらの手間を喰う事はないようにする。
彼が朝食を終えて磨羯宮へ行こうとした時、天蠍宮へやって来た者がいると従者が報告にやって来た。
訪問者はケフェウス星座の白銀聖闘士ダイダロス。
双魚宮へ行きたいので、通らせて欲しいと言うものだった。

別に緊急事態ではないので、わざわざ自分が出る必要はないのだが、とある興味から彼はダイダロスに会ってみようと考えた。
ケフェウス星座のダイダロス。 白銀聖闘士であるのだが、それを補って有り余る程の知恵者だと言う噂を聞いた事があったからだ。
ミロが何かを期待しながら天蠍宮の入り口に行ってみると、そこには幼さの残る白銀聖闘士が一人、本を持って立っていた。
「??」
ミロは何処かにもう一人闘士がいるのかと考え、周囲を見回したが誰も居ない。
「……あの……」
「もしかして、ケフェウス星座の?」
「はい。ダイダロスです」
相手に頭を下げられて、ミロは面食らってしまった。

(知恵者だって聞いていたから、アイオロスやサガと同じくらいだと思っていた……)
勝手に年上だと思っていたが、聞いてみると自分より一つ年下だと言う。 ますます心の中で驚いてしまった。
そして彼が双魚宮へ行く理由は、借りた本を返す為だと言う。
(ご苦労な事だ)
ミロはその報告に、思わずそう考えてしまった。
確かに十二の黄金宮や教皇の間へ行く時は、十二宮の階段を使い、そこの主に挨拶をして通らなくてはならない。
だが、簡略と言う事で魚座の黄金聖闘士の従者に本を返せば、それで済むのである。
「従者の方に返しては、失礼にあたると思いました」
ミロの考えていた事に対して知ってか知らずか、絶妙のタイミングでダイダロスはそう言った。

特に引き止めたり通らせない理由はないので、ミロはダイダロスの通行を許可する。
(いくら知恵者でも、あんなに若い奴に知恵を借りる奴なんているのか?)
先程まで自分が悩んでいたのも忘れて、ミロはそんな事を考える。
その時、彼はダイダロスが仮面の掟についてどう考えているのか聞きたくなった。
(知恵者はなんと答えるだろうか?)
ミロはすぐさまダイダロスを追いかけた。