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露顕 6

誰かに相談してみようと思ったのは、夜がもうそろそろ明けようとしている時だった。
だが、誰に相談したらいいのか?
従者たちは口が軽いと言うより、聖域に昔から伝わる仮面の掟を守るよう言いかねない。
そんな台詞は聞きたくはない。

教皇に尋ねて良いのかと考えると、それも躊躇われる。
教皇が少女を掟に従わせると言ったら、取り返しがつかない。
(でも……)
このまま秘密を抱え続ければ、いつかは後ろめたさと言う胸の疼きに慣れるのだろうか?
しかしそれは、どう考えても無理。
これは自信を持って言えた。

ふと、他の黄金聖闘士の誰かに聞いてみようと思った。
さりげなく、あくまでも自然に……。
年の近いメンバーなら自分は話し易いが答えが出ない事も考えられるし、複数の人間に喋っては意味がない。
相談するのは一人だけ。
最初に思いついたのは、射手座のアイオロスと双子座のサガ。
だが、今この二人は聖域には居ない。
片方は逆賊として討たれ、もう片方は今は不在だった。
それは、ほんの数年前の出来事。未だにアイオロスが逆賊だと言うのは信じられないし、信じていない。
だが、それは絶対に言わないと決めている。
(それを言っていいのはアイオリアだけだし、それ以上に自分がそんな事を言えば、口さがない奴らはアイオリアを攻撃する)
そして自分の言葉は、アイオリアに唆されたという言い分に封じ込められてしまう。
黄金聖闘士という地位につかせた割には、聖域の大人たちは自分を精神的に支配しようとするところが気に入らない。

憂鬱な気持ちで次の候補を考える。
自分より年上の黄金聖闘士というと、蟹座のデスマスクと山羊座のシュラ、そして魚座のアフロディーテの三人だった。
(何か、問題が大きくなる様な気がする……)
あまりにも悩み過ぎて、ミロは誰に相談するかを誰かに相談したかった。


「……ミロ。あの漆黒の闘士は何処へ行ったんだ?」
肩に担がれているシャイナは、ふと自分の疑問を口にした。
(あの闘士は只者ではない筈……)
するとミロは一旦動きを止めて、シャイナの顔を見る。
「さぁな。あの振動の後、気がついたら俺とシャイナしか居なかった」
ミロは周囲を見回すと、再び動き出す。 シャイナはそれ以上は追求しなかった。
彼は会話がそれ以上続かなかった事に、ほっとする。
(あいつは冥闘士だ。もしかすると三巨頭の一人かもしれない)
自分が感覚的に理解した相手の実力を冷静に分析すると、そういう答えになってしまうのだが、ミロはそれをシャイナに言う気はなかった。
三巨頭の一人が聖戦終了後に聖域の白銀聖闘士を攻撃する理由が、今の段階では全然判らないからである。
不安材料を撒き散らして、彼女の精神を疲労させるのは得策ではない。
(まぁいい。俺はこいつを守れれば……)

あの時泣いていた少女を、今度は表立って守れるのである。
彼は思わずその腕に力を込めてしまい、彼女から痛いと文句を言われた。