何処で分ければ良いのか。 幼いながらも黄金聖闘士となったミロは、当時ある問題に直面した。 この問題は小宇宙や技の威力で、どうにかなると言うモノではない。
修行地から聖域に居住を移した頃の事、ミロは思いっきり身体を動かして聖域中の様子を見て回っていた。 今までは蠍座の黄金宮は用事のある時しか居なかったが、これからはこっちでの暮らしが基盤になるのである。
とにかく何処がどうなっているのかを知りたくて、あっちこっちと見て回る。 そして人気のない、だが見晴らしの良い場所に来た時、彼は少し休憩を取る事にした。
しばらくして誰かが近付いてきたのが判ったので、従者かそれとも古参の聖闘士かと思い気配を消す。 説教を聞く気は無かったからだ。 だが……。
来たのは聖闘士候補生の少女。厳しい訓練の合間での行動だろう。 しかし、その直後ミロは背筋が凍りついた。 (うわぁぁぁ〜。
早く立ち去らないと!!!) 彼女はミロの見ている前で、仮面を外して涙を拭き始めたのだ。 だが、少女は自分に気付いていない。 自分の方が気配を消しているのだから仕方のない話なのだが……。
(俺は何も見ていないぞ!) ミロはさっさとその場から離れた。
黄金聖闘士の動きを一介の聖闘士候補生が気付くと言うのは有り得ない。
落ち着きを取り戻した少女は、ようやっと自分の行いの意味を思い出し、周囲に誰もいない事に安堵した。
ミロはその晩、なかなか眠れなかった。 仮面の掟は泣いていたあの候補生の少女にまで及ぶのだろうか?
どう考えても、あの少女は黄金聖闘士である自分に勝てないし、自分も負けるつもりはない。 だが、いきなり好きになれと言われても、お互いに無理である。 (ずっと黙っていれば……)
忘れてしまえば良い話だと、何度も心の中で呟く。向こうは何も知らないのだから……。 しかし、同じような事がまた繰り返されれば今度こそ、あの少女は掟に従わされるかも知れない。
(……) とにかく、どう対応して良いのか判らない。 処世術に関しては、ミロはまだまだ経験が足りなかった。 |