「ねぇ、瞬」
出来上がったサンドイッチを詰めながら貴鬼が話しかける。 「何?」 「何だか親切な人だね」 貴鬼の素直な感想に、思わず苦笑してしまう。
「冥闘士にも色々なタイプがいるんだろうね」 二人がそんな話をしていると、ミューがポットとカップを持ってやって来た。 「これを飲め。紅茶だ」
ミューは貴鬼にカップを持たせると、そのまま赤っぽい液体を注ぐ。 甘い香りに、貴鬼は何の抵抗もなくその液体を飲んだ。 「毒が入っていない事が確認出来たのなら、適当なカップを洗って持っていけ」
そう言って彼は食器棚を指さす。 冥闘士は自分の行動に不信を持たれない様に注意を払っていた。 「早く行動せねば、お茶は冷めるぞ」 貴鬼は一瞬どうしようかと思ったが、瞬が頷いたのでそのまま言われた通りに行動し、サンドイッチを詰めたバスケットを持って台所から出て行った。
テレポートすれば一瞬の事なので、瞬は特に付いてはいかない。
「ありがとう」 彼は使用した道具などを片付けながら、冥闘士に話しかける。
素直に感謝の言葉を口にしたのだが、相手は苦々しそうな表情をした。 「……めでたい奴だな」 ミューは一言そう告げる。 「えっ?」
よもやそんな事を言われるとは思っていなかった瞬はミューの反応が理解出来ず、キョトンとしてしまう。 「……我々は敵同士だ。 自分にとって都合のよい事を相手がしてくれたからと言って、味方になった等と思うな」
彼は聖闘士の方を見ずに言葉を続ける。 「私はパンドラ様から留守番役を命じられたから、その命令を遂行しているだけだ。 そこにはお前たちへの好意は、一辺たりとも無い。
私は今この瞬間にも命令があれば、何の迷いもなくお前やお前の仲間を倒す」 その険しい眼差しに、瞬は言葉が出なかった。 しばらくの間、台所は険悪な空気が漂う。
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