結局、一輝とエスメラルダが小屋の見張り番をする事になり、瞬と貴鬼はミューに引きずられるようにして城へと連れて行かれた。 瞬は小屋の前にアンドロメダの神聖衣を置いて行ったので、エスメラルダは興味深げにそれを見つめている。
そして、その隣にはフェニックスの神聖衣。 二人の聖闘士は、留守番役の冥闘士の言い分を聞き届けた事になる。 彼女は一輝の神聖衣の前に立つ。
「綺麗ね」 エスメラルダは嬉しそうに微笑んだ。
一輝は目の前にいる少女の姿が、幻では無い事を願う。 美しい森の中で微笑む彼女が、何処か現実的ではないような気がするのだ。
「エスメラルダ……」 名前を呼ばれて振り返る彼女。 一瞬、彼女の背に白い翼が見えたような気がした。
そして、城へ連れて行かれた瞬と貴鬼は、いきなり厨房へ案内される。
「??」 何となく嫌な予感を二人は感じたが、ミューは気にせずに料理の準備をする。 「これからお前たちには料理を作ってもらう。 私が作ったのでは娘は警戒して口にしないだろうし、あの男も食べさせないだろうからな」
意外な言葉に、瞬と貴鬼は顔を見合わせる。 「何でエスメラルダさんに?」 「……あの娘はパンドラ様が助け出した者だ。 お前たちと関わっては、一般人は体力をまめに回復させねば生死に関わる」
いきなりの正論に二人は反論が出来ない。 「道具の使い方くらいは教えるし毒味をしても構わない」 いきなり料理人の着る様な服を渡されて、瞬は仕方なく袖を通した。
とはいえ凝った料理を作れる訳ではなく、むしろ事態がどう転ぶか判らない状態なので、瞬は手軽に食べれるサンドイッチを作る事にした。 そういう意味では食材は台所に揃っている。
話を聞くと、自分たちの女主人に食事をして貰う為に、購入したと言う事だった。 冥闘士たちも人間と変わらない生活習慣ではあるが、闘士であるので多少無理はきく。
だが、パンドラにそのような環境を強いるわけにはいかない。 (なんか、僕たちよりもずっといろんな事を考えているなぁ) 瞬はちらりとミューの方を見た。
当の本人は、お湯を沸かしてお茶の用意をしている。 |