INDEX

休息 3

結局、一輝とエスメラルダが小屋の見張り番をする事になり、瞬と貴鬼はミューに引きずられるようにして城へと連れて行かれた。
瞬は小屋の前にアンドロメダの神聖衣を置いて行ったので、エスメラルダは興味深げにそれを見つめている。
そして、その隣にはフェニックスの神聖衣。
二人の聖闘士は、留守番役の冥闘士の言い分を聞き届けた事になる。
彼女は一輝の神聖衣の前に立つ。
「綺麗ね」
エスメラルダは嬉しそうに微笑んだ。

一輝は目の前にいる少女の姿が、幻では無い事を願う。
美しい森の中で微笑む彼女が、何処か現実的ではないような気がするのだ。
「エスメラルダ……」
名前を呼ばれて振り返る彼女。
一瞬、彼女の背に白い翼が見えたような気がした。

そして、城へ連れて行かれた瞬と貴鬼は、いきなり厨房へ案内される。
「??」
何となく嫌な予感を二人は感じたが、ミューは気にせずに料理の準備をする。
「これからお前たちには料理を作ってもらう。
私が作ったのでは娘は警戒して口にしないだろうし、あの男も食べさせないだろうからな」
意外な言葉に、瞬と貴鬼は顔を見合わせる。
「何でエスメラルダさんに?」
「……あの娘はパンドラ様が助け出した者だ。
お前たちと関わっては、一般人は体力をまめに回復させねば生死に関わる」
いきなりの正論に二人は反論が出来ない。
「道具の使い方くらいは教えるし毒味をしても構わない」
いきなり料理人の着る様な服を渡されて、瞬は仕方なく袖を通した。

とはいえ凝った料理を作れる訳ではなく、むしろ事態がどう転ぶか判らない状態なので、瞬は手軽に食べれるサンドイッチを作る事にした。
そういう意味では食材は台所に揃っている。
話を聞くと、自分たちの女主人に食事をして貰う為に、購入したと言う事だった。
冥闘士たちも人間と変わらない生活習慣ではあるが、闘士であるので多少無理はきく。
だが、パンドラにそのような環境を強いるわけにはいかない。
(なんか、僕たちよりもずっといろんな事を考えているなぁ)
瞬はちらりとミューの方を見た。
当の本人は、お湯を沸かしてお茶の用意をしている。