「僕の言い方が悪かったのなら謝るよ。
それなら僕らは城にいた方がいいのかな?」 あくまで瞬が穏やかに話を進めようとしている事と、一般人の少女を怖がらせている事にミューも自分の対応の悪さに気がついた。
少なくとも少女は自分の女主人が助け出した存在である。 女主人の知らない所で、この少女に何かあってはならない。 ミューは深呼吸する。 「……大声を出して済まない。
ただ、聖衣を着た貴様らに城にいられると、別な意味で迷惑だ」 尤もな意見だと思ったので、瞬は頷く。 「そして、パンドラ様達がいつ戻られるのか判らないので、私は城から離れる事が出来ない。
しかし、この場所を誰か一般の人間が近付くける事も避けたい。 一応結界を張ってはおくが、もし森の中で一般の人間がうろついていたら穏便に叩き出してくれ」
矛盾に満ちた言葉だが、逆にミューの心情がよく判る。 すると瞬は何か思いついたらしい。 「それなら僕がここに居るよ。 森の中で動き回っていたら、人に説明するどころか会うのだって確率が低過ぎる。
ここに居た方が確実にこの場所を守れるよ」 確かに瞬の言う通りである。 「それならオイラも手伝うよ」 貴鬼は立候補するかの様に右手を上げる。
その様子にミューは軽い眩暈を感じた。 (牡羊座の弟子が、手伝うだと!) 聖戦の時の事が脳裏に蘇ったが、師匠は師匠、弟子は弟子と無理矢理自分に念じた。
(あの男よりはマシだろう……) いまいち信用しきれないモノを感じるが、今は疑う時間すらない。 自分の不手際で冥界の事が一般人にバレるのは避けなくてはならないからだ。
何とか話がまとまり掛けた時、瞬とミューが一輝のほうを向く。 一輝は自動的にエスメラルダに付いている事になるが、今までの話を聞いていた彼女の方が、彼を独占する事を申し訳ないと思い始めていた。
「……あの、私なら一人でも……」
エスメラルダの言わんとする事は、即全員に却下された。 |