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誇り 2

巨人の影は氷がヒビ割れた所から、自らの身体を槍のように伸ばす。
それは物凄い勢いで、この場所で最も弱そうな人間に対して襲いかかる。
「危ない!」
星矢は春麗とソレントの前に立ちはだかったが、それよりも前に一人の男が己の身を盾にした。
「バイアン!」
星矢は思わず叫んでしまう。
巨人の攻撃はシーホースの鱗衣の右肩の部分を砕く。
「生身のお前に怪我をさせたとあっては、海将軍の名折れだ。
お前は大人しくしていろ!」
そしてシーホースの海将軍は、巨人の槍を粉砕する。
肩から血が流れたが、バイアンは構わずに尚も戦闘態勢を崩さずに居た。

彼女はその場面を、驚きながら見つめる。
『何故、カストール様が……。
どうしてここにペガサスが……?』
テティスの呟きにイオは首を傾げる。
「どうした。テティス」
しかし、彼女の耳にはイオの声は届いていなかった。
『あぁ……、この光景をあの子が見たら……』
テティスはそう言って一滴涙をこぼす。
『……』
そして何かを呟いた後、彼女は気を失ったのか急に身体が重くなる。
イオは改めてテティスが自分から離れない様に体勢を取り直した。

影は氷の中で絶えず暴れる。 ポセイドンはその影に、違和感を感じた。
(ガイアめ。怒りに駆られて、ギガースたちに力を与えたな)
既にギガントマキアから長い月日が経っている。
一度は死を与えたとはいえ、相手は地母神ガイアが全面的に味方をしている巨人族。
以前の巨人族ではない何かに変容している可能性もある。
(予言から切り離す為に、何かしらの薬草を施したか!)
ギガントマキアの時、ギガース一族には一つの予言が下されていた。
それは神々のみでは滅ぼされる事はないが、人間が味方をした時は滅ぼされるというものだった。
その予言を回避する為には、人間にも滅ぼされない様に薬草を施す事が必要だった。
だが、そのような事を成就させる訳にはいかないオリュンポス神族に、地母神ガイアは薬草を全て奪われてしまう。
そして予言通り、ギガース一族はヘラクレスという味方を得た神々に滅ぼされたのである。
(女神ニュクスの予言は……)
海皇は敵の影を見つめた。