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続・嫉妬 2

(……)

彼の脳裏に一つの光景が蘇る。
内乱の折りに亡くなった弟子の墓標の前に立つ女性聖闘士。
その名を呟こうとした時、聞き覚えのある声が自分の名を呼んでいる。
そして、かの聖戦の時に感じた強烈な殺意。
それと同時に先程まで絶えず喋りつづけていた内なる声は沈黙する。

ミロは苦悩する事を瞬時に止めた。
迷うな!
俺はまだ未来の為に闘わなくてはいけない!!)
自分の中で何かが吹っ切れた時、黄金聖衣から黒い霧が音を立てて消えていった。


聖剣エクスカリバーが暗黒の白羊宮の壁を切り裂く。
そしてシュラはその壁の中に、何かが存在する事に気がついた。
だが、その視線上にポリュデウケースが素早く立った為に、何があるのかは確認が出来なかった。
(あれは何だ?)
シュラは再び右手を構える。
そしてポリュデウケースの方は、この攻撃に表情を変える。
「……これ以上、お前にここを壊されては迷惑だ。
結界に封じてやる……」
次の瞬間、闇の闘士はシュラの右腕を捕らえた。

その頃シャイナは黒い泥に足を取られていた。 もう膝まで泥に拘束されている。
ミロに近付く事も引き返す事も出来ない。
そうしてもがいていた時、シャイナの前にいきなり黒い翼が現れた。
咄嗟に敵と判断したのだが、身動きの取れない身ではほとんど闘えはしない。
彼女は瞬時に防御の体制を取った。

アイアコスはガルーダの冥衣が目指す宿敵を発見すると、その存在を一撃のもとに葬り去ろうとした。
躊躇う理由はない。
医神アスクレーピオスが復活しては、また冥界の秩序は崩壊の危機に晒される。
アイアコスがギャラクティカ・イリュージョンを使おうとした瞬間、金色の光が目の前を走った。
「何っ!」
アイアコスは咄嗟に避ける。

「ミロ!」
シャイナとアイアコスの間に入ったのは、蠍座の黄金聖闘士。彼はシャイナを背に庇うとアイアコスの方を睨み付ける。
しかし、この邂逅は周囲の空間に異常なまでの緊張を与えた。
いきなり岩壁が裂けて小石が弾け飛んだのである。
岩盤に振動が起こったわけではないのに、亀裂が次々と走るのだ。
「空間が裂けるぞ!」
何処からか聞こえてきた声。
その直後、辺りは轟音に包まれた。