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嫉妬 3

混沌の世界の中で見つけた小さな光。
アイアコスはその光に向かって突き進む。

アルデバランは守護星座の名で呼ばれて、咄嗟に視線を上に向ける。
「ガルーダ殿!」
目の前に現れた冥闘士にアルデバランは驚いてしまう。
しかし、それはアイアコスも同じ事だった。
「牡牛座。ここは何処だ!」
いきなりの質問に、アルデバランは困ったような表情になる。
それは自分が聞きたい事だったからだ。
「申し訳ないが、こっちもいきなりここに連れて来られたので、此処が何処なのか分からない。
ガルーダ殿はどうして此処に?」
すると三巨頭の一人である青年は、あっさりと答える。
「面白そうだと思って正体不明の空間に飛び込んだら、此処だったんだ。
あまりにも何も起こらないから退屈になってきたのだが、牡牛座の持つ光が見えたから、文字通り飛んできた」
勇猛だと感心するべきなのか判断に迷う返事である。
「とにかく道はこれしか無いようなので、歩いているところだ」
アルデバランの言葉にアイアコスは首を傾げる。
彼には牡牛座の言う道が何処にあるのかが判らなかった。
彼らの足元には空間しかない。 しかし、確かに相手の足元には床のようなものがあるのだろう。
自分のように空中に浮いているような形ではなかった。

ガルーダのアイアコスは周囲を見回したが、やはり自分の居る空間には混沌としたモノしか見えず、道のようなものは見当たらない。
「残念だが俺には道は見えない。 だがここからは脱出したいから、一緒に行動させてくれ」
アイアコスの依頼をアルデバランは快く了承する。
相手の返事を予測しながら、アイアコスは少々驚いたような表情になる。
「良いのか?」
思わず聞き返してしまう。
「聖戦は一応終わったのだから、無理矢理闘う為の理由を見つける必要はない」
アルデバランはそう言って自分の持っている麦穂を見た。
今、麦穂は12粒のうち5粒がその役目を終えて黒くなっていた。
6粒めの光も徐々に終わろうとしている。
「これは多分、冥界の女神が下さったものだと思うのだが、考えてみるとこの麦穂はガルーダ殿が持つ方が……」
アルデバランの言葉にアイアコスは笑う。
「冥妃様が牡牛座に与えたのなら、牡牛座が持つべきだ。 俺の事は気にするな。
それに俺が持っていては、牡牛座から奪ったのかと逆に冥妃様の不興を買うかもしれない」
その返事にアルデバランは首を傾げる。
「不興を? まさか三巨頭の一人である貴方が?」
「三巨頭の一人だからこそだ。
まぁ、こっちの話はこれくらいにして、さっさと此処を出よう」
アルデバランが動いてくれなくては、アイアコスはどっちの方向に動いて良いのか判らない。
アルデバランは頷くと再び歩きだした。 光は7つめの粒が放っていた。