白鳥が、不安げな様子で自分の事を見ている。 「どうしよう……。あの人、大丈夫かしら……」 金髪の神様の様子は只事ではない。 絵梨衣は足元に寄ってきた白い鳥を抱きしめる。
神様は自分の名を知らなかったのだろうが、いきなり別の女性の名で呼ばれた時は、さすがに驚いた。 ふと、彼女は足元の白鳥がマントをくわえて、引っ張っている事に気がついた。
「どうしたの?」 白鳥はある方向に顔を向ける。 その方角には、かなり距離があるように思えるが、とにかく何かが光を放っている。 (何かしら……)
鳥は光のある方向へヒョコヒョコと歩きだす。 (……付いて来いって事ね) さすがに、先程彼女を見失った事がショックだったのか、白鳥は飛び立とうとはしない。
彼女はしばらくして白鳥を抱き上げた。今度は歩幅が違い過ぎて、白鳥のほうが遅れがちになったからである。 だが、持ち上げて初めて判ったのだが、恋人の神聖衣はほとんど重さを感じない。
(深く考えちゃ駄目よね……) そして白鳥は楽だと言わんばかりに、絵梨衣の肩に顔を乗せていた。 |