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嫉妬 1

白鳥が、不安げな様子で自分の事を見ている。
「どうしよう……。あの人、大丈夫かしら……」
金髪の神様の様子は只事ではない。
絵梨衣は足元に寄ってきた白い鳥を抱きしめる。
神様は自分の名を知らなかったのだろうが、いきなり別の女性の名で呼ばれた時は、さすがに驚いた。
ふと、彼女は足元の白鳥がマントをくわえて、引っ張っている事に気がついた。
「どうしたの?」
白鳥はある方向に顔を向ける。 その方角には、かなり距離があるように思えるが、とにかく何かが光を放っている。
(何かしら……)
鳥は光のある方向へヒョコヒョコと歩きだす。
(……付いて来いって事ね)
さすがに、先程彼女を見失った事がショックだったのか、白鳥は飛び立とうとはしない。
彼女はしばらくして白鳥を抱き上げた。今度は歩幅が違い過ぎて、白鳥のほうが遅れがちになったからである。
だが、持ち上げて初めて判ったのだが、恋人の神聖衣はほとんど重さを感じない。
(深く考えちゃ駄目よね……)
そして白鳥は楽だと言わんばかりに、絵梨衣の肩に顔を乗せていた。


シャイナは慎重に洞窟の奥へと進む。
二人の黄金聖闘士が入っていって暫く経つというのに、何の異変も感じられない。
(いったい奥で何が起こっているんだ?)
とにかく自分の足音しか聞こえない状態である。 逆にこの静けさは不気味であり、油断は出来ない。
そして彼女は一つだけ気になる事があった。
(本当にこの道なのか?)
洞窟の入り口は確かに同じだし、前回自分が黒の聖域を見つけた時のように崖のような場所を下りているのだが、何か様子が違うのである。
だが、ほとんど一本道を歩いているのだから迷うという事は無い。道はずっと下まで続いている。
シャイナは最下層とも言うべき場所に辿り着くと、自分が下りてきた場所を見上げた。
既にこの場所に光はほとんど届かない。
種類の判らない光るコケがほのかに辺りを照らしているだけである。

(やはり何処かで間違えたみたいだ……)
彼女は再び崖を上ろうとした時、背後で何かが動く気配を感じた。
(誰かいるのか!)
咄嗟にサガがいるのかと思い、慎重に気配を消して奥へと続いているのであろう狭い通路に入り込んだ。