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罪状 3

同じ時、聖域に二人の男がやって来た。
一人は英雄テーセウス。もう一人はその親友のペイリトオス。
過去にあったケンタウロス族との戦い(ケンタウロマキア)で、名を馳せた二人の英雄。
テーセウスは以前女神アテナが守護をした事もあるので、聖域としては彼らの来訪を歓迎した。
だが、ペイリトオスが自分を見る視線は何処か険があった。
そして彼らの来訪の目的が判ったのは、自分が別の地で起こった騒乱を鎮めに聖域を離れた時……。

現場を見ていた女官の言葉によると、兄である自分の不在を狙って二人の英雄は妹たちを誘拐しようとし、激しく抵抗したクリュタイムネストラーを誤って死なせてしまったのである。


自分の目の前に姿を見せた暗黒の闘士。
山羊座の黄金聖闘士であるシュラは、今までにない緊張を感じていた。
相手は世界を滅ぼそうとする神。
そして今、聖域を敵に回した最強の男。
(逃しはしない……)
シュラは右手を構えた。


クリュタイムネストラー殺害とヘレネ誘拐という聖域でも未曽有の出来事は、すぐさま海世界のカストールにも伝えられた。
実妹の亡骸を抱いて呆然としている兄。詫びの言葉も出ない。
だが、逃亡した二人の英雄の行き先が判り、ヘレネ救出の準備が出来るや否や、カストールは立ち上がった。
今は哀しみに浸ってはいられない。
スパルタの王女を誘拐した男たちを捕らえねばならない。
片方は女神アテナが守護をした英雄だからこそ、その罪を償って英雄の務めを全うしてもらわねば、聖域の信頼と女神アテナの信仰は地に落ちてしまう。
海皇より許可を得て、カストールは一人の兄としてヘレネ奪還に参加する。

しかし、ようやっと捜し当てた建物の一室で、大事な妹はその身体を弱らせていた。
半身とも言うべきクリュタイムネストラーの死が、ヘレネから生きる力を奪ったのである。
自分たちに対して謝りつづけるヘレネ。

ごめんなさい。

それが妹の最期の言葉だった。