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罪状 1

日本では美穂が幼い子供達と花壇の手入れをしていた。
「美穂お姉ちゃん。お花さん、元気ないね」
女の子は花が重そうに傾いている植物をじっと見ている。
「どうしたんだろうね」
美穂はそういいながら、絵梨衣やジュリアンの事を思い出していた。
心の中では何かに泣きつきいて、思いっきり大声を出したいと思っている。
しかし、自分が不安げな表情をすると子供達も不安になるので、表面上は明るく振る舞う様にしていた。
(しっかりしなきゃ……)
美穂がそう考えた時、小さな手が自分の服を掴んでいた。
「あっ……」
その小さな手の主は、自分の事を不安げに見ている。
美穂は自分が彼女を不安にさせているのだと気が付き、慌てて作り笑いをする。
とその時、手伝いにきてくれている女性が、お菓子が焼けたと声をかけてきた。


意外とも言うべき亡霊との邂逅に、ポリュデウケースは自分の中にあった熱い感情が蘇ってきた事に気がついた。
今まで目的の為に計算し実行し続け、決して誰にも悟られないようにした。
だが、それらを全部否定し無駄にしてでも、今はあの男を滅ぼしたいという思いが強い。
(奴によって、このような感情を蘇らせられるとは……)
人でありながらディオスクーロイ(ゼウスの息子)と呼ばれる兄のカストールに、激しい嫉妬の炎を燃やしたラピタイ族の王ペイリトオス。
彼は自分たち兄弟から妹達を奪い、そして母神と養母を狂気に陥れた。
(……そして聖域は、あの男を許した……)
聖闘士である以上、私闘は禁じられている。
それゆえに、聖域が自分の裁量に任せてくれたのならば、妹達の尊敬する聖闘士のままでいられるよう努力をするつもりだった。
だが、現実は違っていた。