(パンドラ様!)
彼は差し伸べられた手を取る事を躊躇った。 冥王軍の総司令官である彼女は、自分たちを裏切ったと噂されている。 (冥王様の支配となれば、永遠の命が得られた筈……)
死は絶対的なものである。 そこから逃れられるというのに、女主人が逆らうとは考えられなかった。
『所詮、奴ラハ敵ダ』
何かが自分の中で囁く。 『うらのす ヤ くろのす ハ我等ヲ裏切ッタ。 何故、ぜうす
ヤ はーです ガ味方ナドト思ウノダ』 声はますます自分の中で大きくなる。 『巨人族デアル以上、神々トハ相容レヌ……』
(やはり冥王様は、我々を……) そう考えた途端、自分の中で何かが脈打つ。 『スデニ
たるたろす ハ開カレタ……』 そして全身の血が逆流しているのかと思う程、怒りが沸き上がる。 (許さぬ!)
ギガントが怒りの形相で前を向いた時、彼の異変を感じ取ったバレンタインが、咄嗟に彼のことをぶん殴った。 |