海で育ったポセイドンは、弟であるゼウスが父神を倒せるまでに育つのを待つしかなかった。 自分がどんなに力を得ても、自分では父神を倒してハーデスや姉たちを助けることが出来ない。
そしてゼウスが倒す事によってしか、父神であるクロノスが他の神々に与えた恐怖を払拭することは出来ない。 自分では実際に倒せたとしても、予言の子ではない為、世界は常に父神の影に怯えることになるからだ。
それほどまでにガイアの予言は絶対だった。
だが、父神に呑み込まれた兄と姉たちの事は心配だった。 もしかすると自分たちが救いに行くのが遅くて、もう父神に吸収されてしまっているのではないかと、思わないことも無かったからである。
そして母神レアーは夫にポセイドンとゼウスの事を知られたくなかったので、彼に会うことはしなかったし、ポセイドンを養育していた者たちには、彼がゼウスに会いに行く事を禁止させていた。
ゆえに、彼は常に孤独の中にいた。 心の中に沸き上がる闇は、徐々に彼自身を蝕んでゆく。
そして運命の闘いの時、ポセイドンはようやく兄弟たちに会うことが出来た。
だが、その頃にはハーデスもゼウスも自分という存在を認めていないのではないかと疑心暗鬼になっていた。 自分は結局、戦いが起こるまで動くことが出来なかったのだが、その判断自体が間違えていたのではないのか?
その前に父神の腹から、ハーデスと姉たちを助け出すことが出来たのではないか? 結局、戦いの後、姉たちや兄弟に何も尋ねる事無はなく、彼は海の支配者となった。
そして彼の中の闇は、静かになる。 だが彼の誤算は、闇は消えたと勘違いをした事にあった。 |