(このような時が、いつかは来ると思っていた……)
海皇ポセイドンは、クラーケンのアイザックを従えて聖域の浜辺へやってきた。 浜辺の大地は抉られており、爆発の凄惨さを物語っている。 だが、海面は陽の光を受けて美しく輝いている。
(アテナは敵対しながらも、この美しい場所に神殿を作ってくれていたのだな……) 今でこそ、何故この浜辺に神殿が建てられていたのか誰も知らないが、元々ここにそういう場所を作ったのは、アテナがパラスとの友情を大事にしていたからである。
海界側で何かあった時に、親友が助けを求め易い様にしたのだ。 地上は色々な意味で海や山のお陰で外敵から身を守れるのだが、海の世界はそういうわけにはいかない。
古の時代に勢力を誇ったモノが、その深い海の底から目覚めることがあるかもしれない。 別の大地で巨大な邪悪が胎動しているかもしれない。 その時に真っ先に攻撃を受けるのは、聖域ではなくて海世界なのである。
まず海を制さなければ、それらのものは何処にも移動することが出来ないのだから……。 だからこそ、孫娘であるパラスを競いの女神に託すことにしたのである。
だが、それは海皇自身の中で眠っていた、破滅の意識を目覚めさせることに他ならなかった。 |