穏やかな闇の中で白鳥座の神聖衣は、本物の白鳥へと姿を変える。 絵梨衣は自分が夜の花畑にいることに気がついた。 (ここは何処かしら?) また異世界に迷い込んだのだろうということは、何となく判った。
『またお前か……』 聞き覚えのある声に、絵梨衣は声のする方を見た。 そこに居たのは銀色の髪の青年。 「……」 一瞬しか会った事の無い神なので、彼女は名前が思い出せずに沈黙してしまう。
『まぁいい。 一つだけ言っておくが、絶対に顔と名前は知られない様にしろ。 闇に潜むものに目を付けられると、ロクでもない事になる』 彼はそう言って、絵梨衣が肩にかけているマントを頭からかぶせる。
視野が狭くなるので、絵梨衣は少しだけ布を持ち上げた。 タナトスと目が合う。 『早く行かねば鳥は逃げるぞ』 慌てて絵梨衣は白鳥の方を見る。
白い輝きを放つモノは、かなり遠くまで移動していた。 「ありがとうございます」 絵梨衣は礼をすると、急いで光の元へ走りだした。 |