ダイダロスは自分の名を呼ぶ親友の声に、意識を取り戻す。 「オルフェ……」 「気がついたか。 このまま起きないのではないかと思った」 ダイダロスがゆっくりと上体を起こす。
彼は辺りを見回したが、海辺には自分とオルフェしかいない。 「瞬たちはデスクィーン島へ行ったのか?」 「いいや。ちょっと事情があって、シオン様に会いに行った」
オルフェは立ち上がる。 「そうか……」 「弟子では君を引き止められない。 だから僕が残ったんだ」 親友の言葉にダイダロスは驚く。 「……」
「ダイダロス。僕にだけは嘘を付くな。 ユリティースに会いに行く時も、君の助言がなければ行くことなど不可能だった。 さっき君の弟子から、君がここの場所にあった結界を維持する石版を砕いたと聞かされた」
ダイダロスは俯きながら、何も言わずにオルフェの言葉を聞いている。 「君は聖闘士が知る必要の無い事をたくさん知っている。 それも他の神々に関わることをだ……」
するとダイダロスは自嘲気味に笑って、立ち上がる。 「私は何も知らない……。 知っていたらこんな無茶はしないさ」 「……そうか、それならいい。全て偶然の産物という事にしておく。
ただ、プロメテウスの二の舞は止めてくれ」 するとダイダロスは視線をオルフェから海の方へ移す。 「神々から炎を盗んだ方が、罪の所在がハッキリしたかもしれないな……」
オルフェは親友の様子に不安を感じた。 |