再会した女神と少女は、あまりの偶然に最初は言葉が出せずにいた。 「……シュンレイ」 「エリスさん」 エリスは春麗の両肩を掴む。
「シュンレイ。本当にお前なのか? お前はこの時代の者だったのか? 何故この聖域にいる!」 女神の矢継ぎ早な質問に春麗はどう答えようか戸惑ってしまった。
「エリス。その者は天秤座の黄金聖闘士の養い子です」 ムウが説明をする。 「天秤座の養い子だと……」 エリスは春麗の顔を見る。 彼女はエリスの目を見た後、頷いた。
「ところで春麗。何故この聖域に来たのですか?」 ムウの疑問はもっともである。 春麗は周囲を見回してシオンの姿を探すと、彼は星矢達と何かを話している。
「私が彼に伝えますから、教えて下さい」 春麗は慌てて、事情を説明しはじめた。 「ムウ様。あの……、実はここに来たのはエスメラルダさんに会わせたい方が居たからなんです」
彼はエスメラルダと言われて咄嗟に誰のことか判らなかったが、貴鬼がこっそりと教えてくれたので、五老峰にいた金髪の少女である事を思い出した。 「会わせたい人?」
「紫龍の話だと、一輝さんが知っている人じゃないかって……。 それを確認したかったんです」 ムウは紫龍の方を睨み付ける。 いくら事情があるとはいえ、彼女をこのような危険な場所に確認も無しに連れてきた事を腹立たしく思ったからだ。
「今の話は本当ですか? それで彼女はどうしました」 紫龍は蛇に睨まれたカエルの様に、冷や汗を流しながら答える。 「エスメラルダさんは今、瞬と一緒に海辺へ一輝に会いに行った。琴座のオルフェが一緒だ」
エリスは紫龍の言葉に、春麗の方を見た。 「シュンレイ。 琴座のオルフェとは知り合いだったのか?」 厳しい表情に春麗は頷く。 その時、エリスはある事に気がつく。
「まさか……、エウリュディケーが言っていたゴロウホウの知り合いというのは、シュンレイの事なのか!」 「エリスさん。エウリュディケーさんの事、知っているのですか!」
彼女たちは思わず大声を出した為に、闘士達が一斉に彼女たちに注目する。 その時、カノンから大まかにテティスの事を聞かされたソレントとイオが春麗のもとへやってきた。
春麗は何事かと思い、エリスの腕を掴む。 「春麗さん。私たちの仲間を助けてくれて、ありがとうございます」 ソレントは素直に礼を言う。 知らぬ事とはいえ、自分たちの仲間を大事に守ってくれた少女に、彼らは素直に感謝の言葉を告げたのだ。
春麗は思わず涙が零れそうになる。 そして貴鬼はその様子を見て、自分の行動が間違っていなかった事を知る。 表立って自分が感謝される事はないが、海将軍たちが彼女に礼を言っているのである。
彼はそれだけで、自分が春麗を守れた様な気がした。 「でも……、結局カノンさんにテティスさんを会わせてあげられませんでした……」 「テティスは海闘士です。意識が戻れば、自分の身は自分で守れます。
シードラゴンもそう言いませんでしたか?」 春麗は優しい言葉に涙が止まらなくなってしまった。 五老峰でテティスの事を話した時、やはりカノンは気に病む必要はないと断言したのである。
するとエリスは少し驚いた表情をした。 「シュンレイ。 何故シュンレイがテティスを預かるのだ?」 「エウリュディケーさんから頼まれたんです。
テティスさんとエスメラルダさんのお二人を……」 その返事に彼女はしばらく春麗の顔を見つめた後、急に教皇の方を向いた。 |