INDEX

衝撃 1

(あぁ、またあの夢だ……)
昔から何度か見ていた同じ場面。ジュリアンは海辺で遊ぶ少女たちを見る。
一人はグラード財団の総帥である少女に似ており、もう一人は美穂に似ていた。
今まで夢は夢として何の意味も感じずにいたが、美穂と出会い、謎の青年の攻撃的な行動を目の当たりにして、ジュリアンは全ての元凶はこの場面に隠されているのではないかと思えた。
そして彼は背後に気配を感じる。
もしかすると自分たちは昔から一緒に、この風景を見ていたのかもしれない。
ジュリアンはその気配の主に、心当たりがあった。
「これは貴方の見ていた風景なのですね」
ジュリアンは自分の後方にいる蒼い光に話しかける。
蒼い光はジュリアンの周りを激しく動き回る。
「そんなに動揺しなくてもいいです。
別に海皇様が何を見ようと、咎めるつもりはありませんから」
ジュリアンはようやく、この夢が本当に神代のものである事を知った。
それも自分の家の守護神である海皇の見ていた風景。
蒼い光はますます激しい動きを見せて、いきなりジュリアンの身体に入り込む。
その時、彼らの周囲の光景は全てが灰色に変わった。


地上で起こった爆発は、海底神殿にまでその衝撃を伝える。
小刻みに震える壁や床。亀裂の走った場所もある。
先の闘いで傷つき崩れた個所を修復していた海闘士たちは、一斉に手を止めて辺りの様子に気を配った。
恐ろしいまでの力の流れ。 何か異常事態が発生したのではないかと、判断したからである。
シーホースのバイアンは衝撃が収まると神殿の方が心配になり、部下にその場の監督を命じるて神殿へと戻った。
(あれは海底火山の噴火というレベルのものではない)
バイアンは移動しながら、自分の鱗衣を見る。
シーホースの鱗衣が何かに共鳴しているのか、その表面から微量の水が発生しているのだ。
彼が神殿の入り口に辿り着いた時、カーサとクリシュナもまた後ろから駆けてきた。
「今の衝撃は何だ?」
クリシュナに尋ねられたが、バイアンにも判らない。カーサも同じだった。
「一応、神殿内に異常がないか調べようと思う」
復活を果たした後、海底神殿に戻った彼らは一番最初に神殿内部を調べた。
その時は先の闘いの傷跡は残っていたが、最深部に安置されている海皇の鱗衣は無事だった。
だが、あの衝撃を受けて、その部屋が崩れていないとは言い切れない。
それほどまでに先程の振動は、得体のしれない力に満ちていた。