シャイナは海の方で発生した光を見て驚く。 (敵襲か!) 聖域側の事情を知らない彼女が、破壊された聖域の町を見てそう思うのは仕方のない事である。
「シャイナ!」 他の聖闘士たちと同じように警護についていた魔鈴は、ボロボロの姿である同胞を見て駆けつける。 「今まで何処に行っていた!」
魔鈴はシャイナに肩を貸す。 「……デスクィーン島で黒い聖域を見つけた。 早くアテナに報告を……」 「黒い聖域だって!」 デスマスクが脱出してきたのだから黒の聖域の話は聞いてはいたが、デスマスク自身はデスクィーン島は不案内だったし、脱出したのが夜という事で場所の特定までには至っていなかった。
実際、黄金聖闘士なら島ごと海に沈めるという荒技が使える。 仲間を見殺しにするという代償を支払わされるが……。 「判った。今、十二宮へ連れて行く。
マスクを……」 するとシャイナは怒った。 「そんな事を言っている場合じゃない。 あたしのマスクなんて些細な事だ」 耳元で怒鳴られて、魔鈴はシャイナの口を押さえた。
「その元気があるのなら、自分で報告できるな」 伝言は精度を欲する情報を不明確にする可能性があったし、説明の二度手間をやっている時間はない。
「その為にあの化け物から逃げきったんだ……」 シャイナは自分が怪我をしているのがもどかしかった。 (あたしは白銀聖闘士だ。この命は女神と正義の為にある)
それは弟子が命懸けで示した正義でもある。 あの悲劇によって星矢たちは助かり、延いては聖域に蔓延っていた悪は払拭された。 彼女は今、そんな彼の師匠だったという誇りを私怨で失ってはならないと強く思う。
(カシオス……。この聖域は絶対に守ってみせるよ) シャイナの目は、力強い輝きを宿していた。 |