外へ行く事の不可能になった聖域。 ダイダロスは女神に依頼されたものを白羊宮に置くと、直ぐに外部へ行く為の道を探し始める。 そして彼は警護をしていた一角獣星座の聖闘士からここ数日の聖域の様子を聞いて、崩壊した海辺の神殿へやってきた。
床しかなくなった神殿跡は、かなり片付けられている。 彼は神殿跡を丹念に観察していくうちに、一ヶ所だけ床石が不安定な場所を見つけた。 「先生!」
そこへ瞬が一輝を引っ張って、やってきた。 「瞬、何処か見つかったか?」 「駄目です。 この浜辺も山の方も、ある距離まで行くと引き戻されるそうです」
ダイダロスは一輝の方を向く。 「上手くいけばここから外へ出れるだろう」 「何だと!」 一輝はダイダロスを睨む。
「聖闘士がこんな事を知っているのは邪道だが、今は女神も許して下さるだろう」 彼はそう言って不安定な床石を持ち上げると、そこには黒光りした鏡のような石が出てきた。
「先生、何をするんですか?」 「多分、これが彼の仕掛けた術の媒体だ」 その説明に瞬は石を見る。 「それじゃぁ、この石を壊せば外へ出られるようになるのですか?」
「この石が力を与えている区間は、可能だろう。 だが、罠が仕掛けられているかもしれないし、何より力あるモノを壊すというのは、その力が逆流を起こして、より一層危険な事態を引き起こす」
ダイダロスは、持っていた袋から赤黒い粉の入ったビンを取り出す。 「だが、迷っている時間はない。 瞬とフェニックスは離れなさい」 ダイダロスの言葉に瞬は嫌な予感がした。
「先生……」 「心配するな」 彼は瞬の肩を押す。 「もしかすると失敗して、何も起こらない事だって考えられる。 むしろその可能性が高い。こっちは術を知り尽くした巫女ではないのだからな」
彼はそう言って、何か呟きながら赤い粉を石に振りかける。 しかし、何も起こらない。 「……やはり知識だけでは駄目みたいだな」 ダイダロスが残念そうに、しゃがみ込む。
その瞬間、石は砕け、光が天高く昇り、今度は周囲の床などを壊しながら外へと広がった。 三人はその光に呑み込まれる。 そしてそれは海にまでその力を及ぼしていた。
「今度は何だ!」
シオン達は海の方で発生した光の柱をじっと見つめた。 「教皇。私が確認してきましょうか」 アルデバランが動こうとしたが、彼はそれを止める。
「白銀聖闘士たちに任せるのだ」 そしてシオンは白羊宮の方を向いた。 |