ソレントの方は外部の事情を知らないので、そのまま話を続けている。 「エリス。 貴女は私に贈り物をすると言いました。 私はどんな物よりも、貴女の協力を望みます」
「……お前、本気か?」 エリスは呆れたような顔をする。 「あとで世界一の美女を贈ってやるから、それで我慢しろ」 しかし、ソレントは首を横に振る。
「後で禍根を残しそうな贈り物は、それこそ要りません」 ソレントの即答に、エリスは顔をしかめる。 「神との喧嘩では、お前の寿命が尽きるのが早い。
永遠に答えの得られない闘いを挑む事はあるまい」 「それでも私はジュリアン様を守りたい。 これ以上、ポセイドン様がご自分を傷つけ続けるのをやめさせたい」
彼の決意にエリスは驚く。 そして彼女はしばらくキグナスの神聖衣を見た。 「お前が初代でなかったのが、つくづく残念だ。 あの時代にお前のような男がいれば、あの悲劇はくい止められただろう」
エリスはソレントに背を向ける。 「この空間でお前はヘカテ様の祝福があるから無事だが、アテナたちに負荷がかかっているかもしれない。 すぐに戻るから早く白羊宮から出てくれ」
そう言われても、ソレントは一瞬迷う。 「大丈夫だ。 心配するな」 エリスは直ぐさま姿を消す。 仕方なくソレントは白羊宮を引き返した。
そして彼はシオンから、この聖域の現状を聞かされる事になったのである。
エリスは双児宮で沙織と星華の様子を見た後、人馬宮へ向かう。 (まったく人間というのは面白い。
こんな土壇場で希望を見つけるとは思わなかった。 もしかすると、何とかなるかもしれない) 彼女は素早くこれからの予定を考えはじめる。
そして、楽しそうに微笑んだ。 |