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罠 6

ソレントの方は外部の事情を知らないので、そのまま話を続けている。
「エリス。 貴女は私に贈り物をすると言いました。
私はどんな物よりも、貴女の協力を望みます」
「……お前、本気か?」
エリスは呆れたような顔をする。
「あとで世界一の美女を贈ってやるから、それで我慢しろ」
しかし、ソレントは首を横に振る。
「後で禍根を残しそうな贈り物は、それこそ要りません」
ソレントの即答に、エリスは顔をしかめる。
「神との喧嘩では、お前の寿命が尽きるのが早い。
永遠に答えの得られない闘いを挑む事はあるまい」
「それでも私はジュリアン様を守りたい。
これ以上、ポセイドン様がご自分を傷つけ続けるのをやめさせたい」
彼の決意にエリスは驚く。
そして彼女はしばらくキグナスの神聖衣を見た。
「お前が初代でなかったのが、つくづく残念だ。
あの時代にお前のような男がいれば、あの悲劇はくい止められただろう」
エリスはソレントに背を向ける。
「この空間でお前はヘカテ様の祝福があるから無事だが、アテナたちに負荷がかかっているかもしれない。
すぐに戻るから早く白羊宮から出てくれ」
そう言われても、ソレントは一瞬迷う。
「大丈夫だ。 心配するな」
エリスは直ぐさま姿を消す。
仕方なくソレントは白羊宮を引き返した。
そして彼はシオンから、この聖域の現状を聞かされる事になったのである。

エリスは双児宮で沙織と星華の様子を見た後、人馬宮へ向かう。
(まったく人間というのは面白い。
こんな土壇場で希望を見つけるとは思わなかった。
もしかすると、何とかなるかもしれない)
彼女は素早くこれからの予定を考えはじめる。
そして、楽しそうに微笑んだ。