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罠 5

十二宮全体に仕掛けられた罠。
教皇は姿を現したエリスからそれを聞いて、唸ってしまった。
先程ダイダロスや他の聖闘士たちからの報告で、聖域に全員閉じ込められたと聞かされたばかりである。
しかもそれは外部から聖域に来る事は可能なので、外にいる関係者が聖域の異変に気付く事はないという狡猾さ。
相手は一枚も二枚も上手だった。
「お前たちも腹を括らねばなるまい。
キグナス。依代の補助にお前の神聖衣を使わせろ」
彼女はそう言ってダイダロスが持ってきた薬草の入った袋を手にする。
今、聖域は総出で、デスクィーン島へ向かう手段を探していた。
「それでアテナの様子は?」
今、十二宮前には黄金聖闘士たちとシオン、そして星矢と氷河しかいない。
他は全員、外部へ行ける方法を探しに各所へ散らばっていた。
「……術が第一段階に入った。 だが、元々能力の高い女神だ。
術を打ち消そうとする力が働く。完成するにはもう少し時間がかかるだろう。
こうなると天上界からの滅びの使者の方が早いかもしれない」
エリスは空を見る。
「誰が来るのかは、判らないのか?」
星矢は思わず尋ねる。 エリスは悩む事なく答えた。
「該当する神が多すぎる。
それに秘密裏に行われるだろうから、ここに来るまで誰だかは私には判らない」
最悪な返事だった。

そしてソレントが十二宮へ辿り着く。
「エリス!」
彼は女神に聞こえるように、大声で叫んだ。
「セイレーンか。海皇の依代に何かあったのか?」
氷河から神聖衣を受け取っていた女神がソレントの方を見た。
自分で弾き飛ばしておいて酷いセリフだと思うが、エリス相手に怒っても仕方ない。
ソレントは呼吸を整える。
「エリス。教えて下さい。
ポセイドン様はご自分の孫娘に何をしたのですか!」
直球勝負の質問に、エリスは途端に不機嫌そうな顔をした。
「昔話だ。今のお前には関係ない」
しかし、ソレントも素直に諦めるわけにはいかない。彼は聖闘士たちが入れなかった壁を通り抜け、エリスの腕を掴む。
それをみていた聖闘士たちは全員驚いた。
「この壁は海闘士には無効なのか!」
カノンは自分の鱗衣を見る。
「やっぱりセイレーンはキレたみたいだな……」
いつの間にかイオが十二宮に来ていた。
「スキュラ……」
「ジュリアン様はクラーケンが見ている」
しかし、イオもまた白羊宮には入れなかった。
「セイレーンのみが平気というと……」
カノンとイオは顔を見合わせる。
「女神ヘカテの祝福だろう」
カノンは軽く見えない壁を叩いた。
「ならば彼はこの聖域から出れると思うか?」
シオンの問いにカノンとイオは黙り込んだ。