光は外にいた闘士たちにも見えた。 「何が起こっているんだ!」 だが、彼らは依然、白羊宮に入る事が出来なかった。
光が消えた後、部屋にいたのは沙織とエリスと星華の三人。
「絵梨衣さん!」 沙織が部屋を出ようとするのをエリスが止める。 「依代は生きている! 落ち着け」 反論の隙を与えずにエリスは手早く説明をする。
「あの装飾品は外部の力から依代を守る為に、私が巨人族の鍛冶屋に作らせたものだ。 ただの飾りじゃない。 それに依代はどうやら上の宮に飛ばされたようだ。気配を感じる」
その一言に、沙織は動くのを止めた。 「それよりもポリュデウケースは、罠もご丁寧に仕掛けていたらしい。 これ以上、術をかけると今度は別の罠を連動させる可能性がある。
むしろあの男が全てを見越して、浄化の術の完成と共に罠を発動させる仕掛けをしているかもしれない方がやっかいだ……」 敵にはそれだけの事をやれる時間があった。
沙織はその場にしゃがみ込んでしまう。 「何でポリュデウケースがそこまで……」 「それは本人に聞け。 とにかく術の使用を控えなければならないのなら、逆に今ある円陣を利用する」
そしてエリスは部屋の中を見回して、とある場所に星華を立たせる。 「これは罠を仕掛ける程の複雑さがないから大丈夫だ」 彼女は白い杖を振る。 するとペガサスの神聖衣が現れた。
「術の負荷に関しては、神聖衣の方に向けさせる。 アテナの血でパワーアップしているんだ。少しは持つだろう。 私は依代の様子を見て来るから、今までどおりアテナは妖気を消しておけ。
ペガサスの姉はその円陣に居続ける事。絶対に動くな」 そう言って争いの女神は、部屋を出て行った。
ソレントは鱗衣を装着したまま、十二宮へ向かっていた。
とにかく抹殺されたという孫娘の話を聞きたい。 (何かがあったんだ……) このままではジュリアンは利用され、同じように消されてしまう。
海辺でポセイドンが呟いたであろう言葉。 『やはり罪は償わなくてはいけないようだな……』 もしかすると海皇は何かを後悔しているのかもしれない。
とにかくこの現状を打破しないと、本当に自分は反旗を翻しそうだった。 たとえ自分の主の依代だとしても、ジュリアンは友人なのである。 友人の為に、できる限りの事はしたかった。
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