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大地の女神 4

警護についている聖闘士たちの報告で、聖域の町は徐々に落ち着きを取り戻しているという。
シオンはそれを聞きながら、十二宮の方を見た。
相変わらず、白羊宮に入る事が出来ない。
何度も呼びかけているのだが、中にいるであろうアテナとエリスからの返事が無いのである。
アルデバランは金牛宮であった出来事を話しながらカノンにシードラゴンの鱗衣を渡した。
「まさか、それはポリュデウケースの兄であるカストール本人でしょうか……」
ムウの言葉に黄金聖闘士たちは答えられない。
あり得る事だが信じられない話だったからである。

そして一輝はというと一刻も早くデスクィーン島へ行きたかったが、どういうわけだか聖域から出られない。
何度も外へ出ようとするのだが、黒い靄を通り抜けようとすると再び同じ場所に戻る。
彼は自分たちが閉じ込められた事に気付いた。
「どうやら敵は我々を殲滅するつもりなのかもしれない」
一輝は背後の声に振り返る。
そこにいたのは弟の師匠ダイダロス。
「彼の中の闇は、我々の想像を絶するほど深いのだろう」
ダイダロスは青く広がる空を見上げた。

今度は絵梨衣が白羊宮の前に立つ。 直接エリスに呼びかけてもらう事にしたのである。
そこは立入禁止の如く、見えない壁が立ちはだかっていた。
少し離れた所でカノンと氷河が立っている。
「女神様。絵梨衣です」
しばらくしてエリスがシオンたちの前に現れる。 手には白い杖を持っていた。
絵梨衣は思わず涙ぐんだ。
(女神様……)
「目覚めたようだな」
だが、彼女はあまり絵梨衣に近付かない。
隣にいたシオンが自己紹介をすると、彼女は彼の顔をじっと見た。
「私の顔に何か?」
「……何でもない」
傍若無人な争いの女神は、それ以上何も言わずに白い杖を軽く振った。
シオンの目の前に金色の光が集まる。
「教皇。隣の娘にそれを装着してくれ。
この騒ぎが終わるまで、私は依代の中に封じこめられるわけにはいかない」
シオンの手の中に幾つかの装飾品が現れる。
彼が絵梨衣の方を向いた時、カノンはちらりと見えた装飾品に驚く。
「エリス!それは……」
デスクィーン島で見つかったテティスと少女の身体に付けられていたものと似たデザインだったのである。